保育園ってそんなに入れないものですか?

 大熊が服部印刷に訪問すると、少し落ち込んだ宮田部長が早速話を切り出してきた。


宮田部長宮田部長:
 大熊先生、そういえば、少し前になりますが、「保育園落ちた日本死ね」というブログが話題になりましたよね。国会でも取り上げられるほどになり、すごい時代だなぁと感じましたよ。
大熊社労士:
 確かにそうですね。ブログのタイトルがすごいインパクトですし、匿名だからこそ悲痛な真の叫びだと感じますよね。でも、それがどうかしたのですか?
福島さん:
 多分、育児休業を取っているメンバーが、保育園に入れなかったので育児休業を延長して欲しいと言ってきたからだと思います。
宮田部長:
 そう、そうなんですよ。もちろん法律どおり、まずは1歳6ヶ月まで延長するのですけどね、どうも保育園に入園希望を出すのが遅かったみたいで、何でもっと早く手配をしていなかったのだろうか、と疑問に感じているところです。
福島さん:
 私ももっとフォローをすればよかったのですが、「まぁ、入れるでしょ」と高をくくっていて、保活をまったくしていなかったようなのです。
宮田部長:
 ん?「ホカツ?」
大熊社労士:
 あぁ、子どもを保育園等に入れるために保護者が行う活動のことを、そう呼んでいるですよ。主に認可保育園に入れるための活動になりますけどね。そうそう、ちょうど厚生労働省が保活に関する調査を今年、実施していました。それによると、「保活」を開始した時期は、出産後6ヶ月以降(1歳以下)が23.0%でもっとも多く、次いで、(産後休業後)出産後6ヶ月未満の人が22.1%となったそうです。
福島さん:
 え!そうなのですか!?私は出産前から保活をしていたので、案外遅く感じてしまいます!
大熊社労士:
 もちろん、妊娠中・産休中という人も、両方をあわせると30.8%となっているので、実際には妊娠から産後6ヶ月未満で半数以上の人が保活を始めていることになります。もちろん、この調査の対象が政令指定都市と平成27年4月1日現在で待機児童が50人以上いる市区町村を対象にしているので、どうしても保活にも力が入っているとは思いますけどね。
宮田部長:
 なるほど、そういう背景もあるのですね。それで、保活に熱心な人は成果は出ているのですか?
大熊社労士:
 成果というのが何を指すか難しいのですが、希望どおりの保育施設を利用できた人が56.8%、希望どおりではないが、認可保育園等を利用できたという人が25.7%となったそうです。ですので、8割以上の人が子どもを預けることができた、つまりは職場復帰を果たせたであろう、ということになるのでしょう。もちろん、認可外の保育施設を利用することにした人も約1割いますので、復帰できた人はもっと多いのでしょうけどね。
福島照美福島さん:
 いろいろな見方はあるのでしょうけれども、大熊先生がおっしゃった結果だけを見ると、がんばって多くの人が復帰している現状があるということなのでしょうね。
大熊社労士:
 そうですね。ただ、保活に関し、苦労・負担を感じたとする人は多く、この調査結果にはあまり反映されていない保活を途中でやめてしまった人なども存在するのでしょう。政府はこういうところにも目を向けて、保育の受け皿を新規に確保していく取組みを進めていくのでしょうね。
宮田部長:
 なるほど、途中で保活をやめていく人・・・かぁ。実は、今回、育児休業を延長することになった従業員ですけどね、とても優秀なんですよ。だからこそ、職場は予定通りに復帰をして欲しかったし、少しでも早く戻ってきて欲しいと思っているのです。
大熊社労士:
 なるほど、宮田部長が残念そうにされているのは、そのような理由があったからですね。
福島さん:
 しかも育児休業終了予定日の直前に連絡が入ったので、余計にがっかりしたのです。私自身、連絡を総務主導ではなく、復帰予定の・・・育児休業前の部署のメンバーに任せていたので、状況把握をするのが遅くなってしまいました。
大熊社労士大熊社労士:
 そういう理由があったのですね。「待機児童がいる」という話は耳にしていても、いざ自分のこととなると、遠い世界のことに感じたり、自分の住んでいるところは問題ないだろうと感じたりするので、まずは保活として何をすべきかということを、育児休業に入るときに教えておく必要があるのかもしれませんね。
宮田部長:
 確かにそうですね。そして、復帰の予定もしっかりと確認しておく。
福島さん:
 はい。認可保育園ですと、就労証明のようなものも必要になってきますので、そのような必要性はないかも問いかけながら、しっかりと対応していきたいと思います。
大熊社労士:
 そうですね。ぜひ福島さんの経験を活かし、復帰の支援をしてあげてください。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。厚生労働省の調査によると、「「保活」による苦労・負担」として、「情報の収集方法が分からなかった」という回答をしている人もかなりの数、存在します。育児休業者が予定通り復帰できるかというのは、人材配置の面においても重要になってきますので、企業としても、認可保育園に入所を希望するのであれば、市区町村役場に早めに確認する必要があること等を事前に伝えておくようにしましょう。


参考リンク
厚生労働省「「『保活』の実態に関する調査」の結果等について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126129.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

facebook最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu