有休も半日単位での取得を認めなければならないのですか?

 服部印刷に出向いた大熊の目に入ったのはいつもより少しほっとしている宮田部長の顔だった。


宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。先日、改正育児・介護休業法の対応として、育児介護休業規程の整備も終わりました。従業員向けにもアナウンスをしたので、あとは労働者代表の意見を聞いて、届出するだけになりました。
大熊社労士:
 そうでしたか、それはお疲れ様でした。特に何もなく終わりましたか?
宮田部長:
 はい、特に問題なく終わりました。
大熊社労士:
 そうでしたか、よかったですね。
宮田部長:
 それで、説明しているときに、ふと感じたことなのですが、子の看護休暇と介護休暇は半日単位で取らせることができるようにしなくてはならないとのことでしたが、年次有給休暇は確か違いましたよね?
服部社長服部社長:
 あ、その件、私の知り合いの社長もこの前、ごにょごにょ言っていたな。従業員から年次有給休暇も半日単位で取れるようにして欲しいとかいうのが出てきたとか。
大熊社労士:
 なるほど。年次有給休暇の半日の制度は実態として先行していて、今回、子の看護休暇・介護休暇について半日の制度が義務化されたため、混乱をしているのでしょうね。
宮田部長:
 そうそう!そこがよく分からなくなってしまいました。
大熊社労士:
 では、整理をしておきましょう。まず、年次有給休暇については法律で1日単位での取得を義務付けています。そして、5日間については、時間単位での取得も認めています。一方の子の看護休暇・介護休暇については、1日単位もしくは半日単位の取得、どちらでも取得可能なように義務付けています。そして、時間単位での取得については、何も言っていません。
宮田部長:
 ん?ってことは、年次有給休暇の半日と、子の看護・介護休暇の時間単位についてはどうなっているのですか?
大熊社労士:
 はい。まず年次有給休暇の半日についてですが、年次有給休暇は日単位で取得することが原則としつつ、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、1日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位での取得も可能と通達で示しています。
服部社長:
 なるほど。いまの前提があるから、会社が半日単位での取得を認めないということでも可能ということですね。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、おっしゃるとおりです。ただ、日本は世界的に見ても年次有給休暇の取得率が低く、労働時間が長いこともあり、より取得しやすいように5日の範囲内での時間単位の取得が労働基準法で認められるようになりました。もちろん、時間単位の取得となると中抜けなど、業務運営に少なからず影響を与える職場もあるでしょうから、導入には労使協定が必要となっています。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士:
 一方の看護・介護休暇なのですが、こちらは今回の改正で半日単位での取得が義務化されました。少し話はズレるかもしれませんが、各々の目的を確認すると、年次有給休暇が「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ると共に、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨」であるのに対し、子の看護・介護休暇は、「休暇」という名前のとおり、子どもが病気やケガをしたときの看護や、両親の介護に必要な場合の休みとなっています。そう考えると、年次有給休暇が一日単位、看護・介護休暇が半日単位という理由も分かりますよね。
福島照美福島さん:
 でも、大熊先生、そうなると子の看護・介護休暇も時間単位での導入のほうが、取得しやすいですよね。
大熊社労士:
 さすが鋭いですね。実は、今回の法改正の前提で時間単位での取得の義務化のような話も出ていたようなのですが、業種業態によって導入が難しく事務の煩雑さを招くこともあり、労働者の要望も多い半日単位での取得が義務化されたようですね。
福島さん:
 確かに時間単位だと、残りの時間数の管理や給与の控除など、私の管理は大変になるなぁ…。
大熊社労士:
 ですよね。もちろん、そうは言っても、時間単位の要望もあるわけなので、指針では、労働者の勤務の状況等が様々であることに対応し、時間単位での休暇の取得を認めること等制度の弾力的な利用が可能となるような配慮を会社に求めています。以上をまとめると、このような形になりますね。

休暇

< b>服部社長:
 まぁ、大熊さんがおっしゃるように、年次有給休暇の取得率をあげたり、そもそも従業員がもっと、いい意味で自分の都合のよいタイミングで年次有給休暇が取得できるように考えるのであれば、年次有給休暇の半日単位というのも悪くないのだろうな。
宮田部長:
 そうですね。看護・介護休暇は無給ということもあり、どうしても年次有給休暇がある従業員は年次有給休暇を先に消化します。となると、年次有給休暇も半日単位で取得したいという要望は、よく分かるところですよね。
大熊社労士:
 そうですね。私も同じように思います。導入するかの判断は会社に委ねられることになりますが、私自身は年次有給休暇の取得率向上をし、さらには退職時に年次有給休暇が残っていることで、退職前に年次有給休暇をまとめて取ることの防止にもつながると思っています。
服部社長:
 今度、先ほどしに出した社長に会う予定があるので、そんな話をしてみますね。大熊さん、ありがとうございました。

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。子の看護休暇・介護休暇が半日単位で取得できるようになり、年次有給休暇の仕組みとの混乱がされやすくなりました。有給・無給の区別も含め、きちんと整理をしておきましょう。

(宮武貴美)
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