同一労働同一賃金(1)正社員とパートの給料を同じにしないといけないのですか?

 服部印刷を訪れた大熊を待っていたのは今年初めて会う服部社長だった。


服部社長:
 大熊さん、こんにちは。今年お目にかかるのは初めてでしたよね。今年もよろしくお願いします。
大熊社労士:
 こちらこそよろしくお願いします。最近は、新聞を見ても人事労務に関する記事が毎日のように掲載されており、激動の年になりそうですよ。
服部社長服部社長:
 あ、そうそう、それですが、同一労働同一賃金に関することが昨年末に話題になっていましたよね。これ、結構気になっていまして。
宮田部長:
 同一労働同一賃金!?同じ仕事なら同じ給料ってことですか?
大熊社労士:
 はい、おっしゃるとおりです。現状、一般的には正社員と非正規社員・・・非正規には契約社員やパートタイマー、派遣労働者のことを指すわけですが・・・、この両者の間で待遇の違いがかなりあります。
宮田部長:
 月給と時給とかってことですか?
大熊社労士:
 確かに月給と時給の違い、安定しているかどうかという違いがありますが、それよりも例えば月給を時間換算した場合の時給額の違いとか、賞与の有無や各種手当の違い、更には福利厚生の差など。かなりありますよね。
宮田部長宮田部長:
 確かに。同じような仕事をしていても、正社員の方が時給額がかなり高くなっていると直感としてもそのように感じます。
大熊社労士:
 そうですね。そのような違いについて、同じ仕事をしているにも関わらず、処遇が異なっているのは問題ではないか。同じ仕事をしているのであれば、その価値は同じだから、同様の処遇にすべきだ、ということです。もちろん、時給額は同じで働く時間の長さにより、正社員が多い給与をもらうということには問題ないのですけどね。
服部社長:
 ずっと昔は正社員が基幹的な業務を行い、パートはあくまでも補助的業務ということで、労働条件が大きく違った。両者に意識の違いもあり、パートは比較的時間を自由に使うことができた。それがいまでは非正規が全労働者の4割を占め、会社も正社員と近しい業務にパートを使うようになっている。そんな背景があるのでしょうね。
大熊社労士:
 そうですね。待遇の差を説明できない時代がやってきているのでしょう。特に諸外国と比べると、日本は非正規の待遇が極端に低くなっていることもあり、問題意識が高くなっているのです。
宮田部長:
 でも、何で、昨年末に話題になったのですか?
大熊社労士:
 実は、この問題は以前からいろいろ取り沙汰されており、首相官邸で「働き方改革実現会議」が発足、議論がされてきました。そして、平成28年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」というものが出されたのです。
福島さん:
 「案」・・・ですか?
大熊社労士:
 さすがに細かなところ、聞き逃しませんね。現状は正社員と非正規の間で、賃金が異なるなどの待遇差がある場合に、どのような待遇差が不合理で、どのような待遇差が不合理でないかを、待遇ごとに事例も含めて示したものになります。特に法的な拘束力があるわけではないのですが、今後、法改正に向けた検討が行われる予定であり、ガイドライン案は、今後、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて、最終的に確定されることになっています。
服部社長:
 現状「法的拘束力がない」というのはポイントになりそうですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。もちろん、法的拘束力がないからといって、大きな待遇の差があってもよいのだ、ということにはなりませんが、例えばいますぐパートさんの時給を上げる必要があったり、パートさんにも相応の賞与を払えというわけではありません。ただし、1点注意が必要と感じているのは、現行の労働契約法、パートタイム労働法でも、正社員と非正規の間の不合理な待遇差を禁止しています。ですので、きちんと自社の状況を把握し、分析をしておく必要があります。
服部社長:
 なるほど。うちもパートさんがいるので、一度、どの程度の違いがあるかの比較は現状の漠然とした感じからもう少し具体的なものに落とし込んでまとめておいた方がよさそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。
福島照美福島さん:
 私の方で、来年度の昇給の参考資料を作ろうと思っていたので、その際に、部署や業務内容、勤続年数というで時給相当額の資料を作ってみますね。
服部社長:
 よろしく頼むね。
大熊社労士:
 今回はガイドライン案の内容にあまり入れませんでしたので、次回、内容をも少し見てみることにしましょう。
宮田部長:
 よろしくお願いいたします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。同一労働同一賃金は今後、注目すべき人事労務分野のひとつになります。厚生労働省では専用のページ「同一労働同一賃金特集ページ」を開設し情報をまとめていますので、注目していきましょう。


参考リンク
首相官邸「働き方改革の実現」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html
首相官邸「同一労働同一賃金ガイドライン案」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf
厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

(宮武貴美)
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