出産や育児・介護で退職した人を再雇用した場合に助成金が支給されます
4月に入社した新入社員もそろそろ会社に馴染んできているだろうな。そんなことを思いながら大熊は服部印刷に向かった。
服部社長:
大熊さん、こんにちは。新年度に入り、新入社員のよい影響が社内に漂っているように感じます。やはり気持ちのよいものですね。
宮田部長:
そうそう、いろいろ新たなスタートを切った従業員もいるようで、奥さんが職場復帰をするので、保育園の送迎を手伝うことになったというメンバーもいましたよ。
福島さん:
あ~!宮田部長、その「手伝う」という表現、ダメですよ!男性も当然、育児参加!「お手伝い」の気持ちではなく、「子どもを育てていく」主体性を持たないと!
大熊社労士:
なかなか福島さん手厳しいですね。とは言え、そういう点から意識を変化させていくということは、とても重要だと感じています。
福島さん:
そうなのです。当社でも、出産や育児で退職する女性従業員がいて、両立の難しさや個人の子育て観のようなものの違いを肌で感じているところでした。
服部社長:
なるべく長く働いてもらいたいとは思うものの、なかなか個人の要望にすべて沿うわけにも行かず、やむを得ず退職をしていく従業員がいるのですよね。何とかならないものか・・・。
大熊社労士:
そうですね。個人的には2つの方法があると思っています。1つ目は、社長がおっしゃったように個人の要望に沿った制度を作って、それを運用していくこと。ただし、これはある意味、要望が寄せれられるごとに対応していくことになり、キリがないという結果になります。
服部社長:
確かに育児の短時間について6時間ではなく4時間にして欲しいという要望を聞いて、4時間ではパートよりも短くなり、任せられる仕事も限定されるので、非常に厳しいという判断をしました。
大熊社労士:
そうですね。さて、もうひとつが退職をしても一定期間内であれば、再雇用するというものです。世間で見かけるものとして配偶者の転勤に随行することで、会社を退職することになった場合に、再度、雇用するという制度があります。このように退職理由によっては、再雇用をすることを制度として設けておくことです。
服部社長:
なるほど。一旦、退職することはやむなしと判断するけれども・・・ということですね。それであれば、確かに、その人にあった働き方の制度を、会社として導入するということまでは必要ないな。
宮田部長:
当社の方針も理解しているし、当社も働きぶりが分かっているので、改めて面接して試験を実施し、という採用活動を踏むよりも数倍、採用しやすいですね。
大熊社労士:
そうですね。政府もこのような制度を推し進めているため、今年の4月から助成金を用意しています。
宮田部長:
へぇ、助成金ですか。
大熊社労士:
はい。両立支援助成金の再雇用者評価処遇コースというものなのですが、「妊娠、出産、育児又は介護を理由として退職した者が、就業が可能になったときに復職でき、適切に評価され、配置・処遇される再雇用制度を導入し、希望する者を採用した事業主に支給する」という内容になっています。
宮田部長:
介護も含まれているのですね。今後は介護離職も起こるのではないかと思っているので、このような制度があると、安心して退職できるってなりますね。
大熊社労士:
あはは、「安心して退職」ですか(笑)。「安心して介護に専念」ですね(笑)。
宮田部長:
おっとっと、こりゃ失礼しました。いや、自分の身に置き換えたら思わず出てしまった言葉です。
大熊社労士:
確かに従業員のみなさんからしたら、戻ってくる場所があるということはある意味「安心して退職」なのかも知れませんね。あ、ただし、助成金の対象としては、退職後1年以上経過している従業員を再雇用して、無期雇用者として一定期間継続雇用する必要があります(有期雇用者として再雇用し、無期雇用に転換後、一定期間継続雇用することでも対象となります)。
宮田部長:
なるほど、1年間ですね。
福島さん:
助成金ですと、その制度を就業規則等に規定しておく必要がありますよね?
大熊社労士:
そうですね。制度を就業規則等に記載する必要がありますし、制度については、再雇用する際に退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることも明記することが求められています。
服部社長:
なるほど、過去の実績を一旦リセットするというのは、確かにその人にとっては、モチベーションの下がる話ですからね。まあ、助成金をもらうかは別としてこのような制度を当社でも入れる方向で検討しよう。とてもいい制度だと思うよ。
宮田部長:
そうですね。様々な理由で退職する従業員がいる中で、「また当社で働きたい」と思ってくれる人は貴重だと思います。ぜひ、そういう従業員を大切にしたいと思います。
福島さん:
一度、世間の動向を私のほうでも調査してみます。大熊先生、またいろいろ教えてくださいね。
大熊社労士:
そうですね。制度を作るときには、退職後、何年間まで再雇用制度の対象にするのかといったことも考えていく必要がありますので、一緒に考えていければと思います。
服部社長:
よろしくお願いします。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回の助成金ですが、中小企業では、再雇用1人目について38万円<48万円>、再雇用2~5人目について28.5万円<36万円>が継続雇用6ヶ月後・継続雇用1年後の2回に分けて半額ずつ支給されます。実際に、再雇用者が出てからの支給にはなりますが、事前に制度の導入が必要ですので、助成金の受給を考えている場合には就業規則の整備等を進めておきましょう。
※<>は内は、生産性要件を満たした場合の支給額です。
参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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