病気の治療と仕事の両立支援について考えてみましょう

 前回の訪問時、大熊は服部印刷へ健康経営の取り組みについて提案したが、その後の進捗状況が気になっていた。
前回のブログ記事はこちら
2017年8月21日「「健康経営」への取り組みが増えてきています」
https://roumu.com/archives/65783290.html


大熊社労士:
 こんにちは~。まだまだ暑いですね。前回お伺いした際、健康経営の取り組みについて、社長も前向きに発言されていましたが、その後進んでいますか?
福島照美福島さん:
 いえ、さすがに具体的な取り組みはまだこれからといった感じです。でも、いろいろアイデアはあるようでしたから、そのうち指示が来るのだと思います。
大熊社労士:
 そうですか。慌てる必要はありませんから、自社で取り組めるものをじっくり検討されるとよいのではないかと思います。なお、健康経営に関連した取り組みとして、最近は、がんに罹った従業員への支援体制を設けている会社も増えているんですよ。
宮田部長:
 あ、それ、ニュースで聞きました。無償で社員にがん検診を実施して、早期発見につなげようというものですよね。
大熊社労士:
 そうですね。いろいろな取り組みがありますが、その早期発見への検診もその一つですね。いまやがんになる人は、国民の2人に1人といわれています。年間85万人が新たにがんと診断され、仕事を持ちながら、がんで通院している人の数は、32.5万人もいるとのことです。
福島さん:
 そんなに多いのですか。宮田部長と私であれば、どちらかががんに罹るってことですね。
宮田部長宮田部長:
 おいおい、変な例えをしないでよ、福島さん(苦笑)。それでなくても、我が家はがん家系といわれているんだから…。
大熊社労士:
 確かに、身内をがんで亡くした人は多いと思います。そういった意味でも、健康診断の重要性は増々高まります。労働安全衛生法で定めている定期健康診断の項目では、十分とまでは言えませんが…。
福島さん:
 それでも、必要最低限のチェックはできますので、従業員の人には、きちんと受けてもらわないといけませんね。
大熊社労士:
 その通りです。政府が進めている働き方改革でも触れられているのですが、病気治療しながら仕事をしている人は、3人に1人であり、病気を理由に仕事を辞めざるを得ない状況や、職場の理解が乏しいなどの理由で、仕事との両立が困難な状況に直面している人が多くいて、この課題を解決するためにも、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を発表しました。
宮田部長:
 へえ~、そんなガイドラインが出ているのですね。
大熊社労士:
 そのガイドラインでは、治療と仕事の両立支援を行うための環境整備として、以下の事項を掲げています。
労働者や管理職に対する研修等による意識啓発
労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口の明確化
短時間の治療が定期的に必要な場合に、時間単位の休暇制度、時差出勤制度などの検討・導入
福島さん:
 なんだか、子育て支援の制度内容と似ている感じがします…。
大熊社労士大熊社労士:
 確かに、そうですよね。政府は、この治療と仕事の両立支援では、不妊治療と仕事の両立についても視野に入れているようです。ともあれ、健康経営を検討する上では、予防の観点も重要ですが、実際に継続治療が必要となった場合に、どのような制度があるとありがたいかという視点で考えてみてもよさそうですね。
宮田部長:
 仕事を休むまではいかなくても、定期的に通院が必要となったら、時差出勤制度があるとありがたいなぁ。
福島さん:
 時差出勤であれば、働く時間は同じですし、周りにも気兼ねなく申出できますね。
宮田部長:
 そうだね。まずは育児・介護の事由だけでなく、病気治療のため通院等が必要となった場合の時差出勤制度から始めてみることを、社長に提言してみよう。
福島さん:
 そうですね。まずは社長にこの件を提案し、健康経営全体についても議論を進めていきましょう!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。治療技術の進歩等により、がんと診断されてから5年以上の生存率も6割となり、がんは「不治の病」から「長く付き合う病気」に変化しています。仕事をしながら治療を続けることが可能な職場環境を整えていくことは、人材確保をしていく上でも、重要な課題となります。健康経営に取り組む一環として、柔軟な勤務形態、治療・通院目的の休暇・休業制度の導入を検討することに加え、その制度を利用しやすい社内の風土を創っていくことが重要となります。まずは厚生労働省から出ている「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を参考にしてみてください。


関連blog記事
2017年8月21日「「健康経営」への取り組みが増えてきています」
https://roumu.com/archives/65783290.html

参考リンク
厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000113365.html

(小浜ますみ)

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