時間外労働の上限規制の2~6ヵ月平均で80時間以内とはどのように計算するのですか?
大熊が服部印刷を訪れると、服部社長の姿が見えた。
服部社長:
こんにちは。先生。
大熊社労士:
こんにちは。今日は服部社長がいらっしゃるのですね。
服部社長:
はい、今日は珍しく終日社内なのです。大熊先生がいらっしゃるときいたので、ちょうど確認したかったことがありまして。
大熊社労士:
はい、わかりました。何でしょうか?
服部社長:
働き方改革関連法が成立して、時間外労働の上限規制時間がいよいよスタートしますね。
大熊社労士:
はい、時間外労働の上限規制については大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用となります。
服部社長:
その上限規制時間で、1ヵ月は100時間未満、2~6ヵ月の平均では80時間以内という規制時間がありますが、2~6ヵ月平均とは過去6ヵ月平均の結果が80時間以内になっていればいいということでしょうか?
大熊社労士:
なるほど、わかりました。その平均80時間という意味は、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、そして6ヵ月のどの期間を見ても平均80時間以内にしなければいけないということです。
宮田部長:
はぁ~、そういうことだったんですね。
大熊社労士:
福島さん、いま電卓をお持ちですか?計算をお願いしたいのですが。
福島さん:
はい、手元にあります!
大熊社労士:
ありがとうございます。それでは、例えば、時間外労働が8月は83時間、9月は60時間、10月が98時間だったとしましょう。すべての月で100時間未満ですから、まず単月については問題ありませんね。次に平均ですが、8月と9月の平均は何時間になりますか?
福島さん:
はい、(83+60)÷2 ですから、71.5時間です。
宮田部長:
80時間内でクリアですね。
大熊社労士:
それでは、8月~10月の3ヵ月平均はどうでしょうか?
福島さん:
え~とっ、(83+60+98)÷3は、80.333…です。
宮田部長:
ありゃ、80時間を少し超えてしまいますね。アウトってことですね。
大熊社労士:
はい、そうなんです。この2~6ヵ月平均は、どの期間をみても平均80時間以内にしなければならいということです。また、起算月は各月となりますので、どの月から計算しても2~6ヵ月平均で80時間未満に管理しなければならないということになります。
服部社長:
なるほど、そうでしたか。最終的には、半年平均で80時間以内になればいいということではないってことですね。
福島さん:
とても計算が煩雑ですね。
大熊社労士:
そうなのです。煩雑ついでに申し上げますと、この1ヵ月100時間未満、2~6ヵ月平均では80時間以内の時間には、法定休日労働時間も含めて計算します。
宮田部長:
はぁ~、もうなんだかわからなくなってきました。
福島さん:
ここについては、労災認定基準を用いているからなんですよね?
大熊社労士:
さすが福島さん。その通りで、労災認定の基準とされる長時間労働時間には、時間外労働時間だけでなく、法定休日労働時間も含めて100時間、80時間が考慮されていますから、今回の労働基準法の改正でも、45時間を超える長時間労働が発生した月については、法定休日労働時間も含めて時間数を考慮することになりました。
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b>服部社長:
そうすると、今後は法定休日労働をさせないということが、コンプライアンス上も管理上もよさそうですね。
大熊社労士:
はい、そう思います。それが一番、前向きな解決方法ですね。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。働き方改革関連法も成立し2019年4月より順次施行となります。改革のメインである長時間労働の是正については、労働基準監督署の調査がより強化されることは間違いありません。上記で述べたように、2~6ヵ月平均で80時間のとらえ方については誤解が多いところでもあります。法施行後は、上限時間を超えることは許されませんので、時間外労働をなくしていくためどのような業務改善をするか、早急に取組む必要があります。
参考リンク
厚生労働省「労働時間に関する制度の見直し」
https://www.mhlw.go.jp/content/000335628.pdf
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
(小浜ますみ)
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