年次有給休暇の斉一的取り扱いとはどのようなものですか?
来春より施行される働き方改革関連法の中で、実務上、最初に対応が必要になるのが年次有給休暇の取得義務化。本日も大熊はその対応に関する説明をすることとした。
前回のブログ記事はこちら
2018年9月3日「2019年4月より年5日の年次有給休暇取得が義務付けられます」
https://roumu.com/archives/65800703.html
大熊社労士:
前回、2019年4月より施行される年次有給休暇の取得義務化についてのお話をさせていただきましたが、その中で管理が煩雑になりそうだというお話があったかと思います。
宮田部長:
はいはい、「年休の付与日」から1年以内に最低5日を取得させるというものですよね。当社の場合は、法律どおり入社6ヶ月の時点で年休を付与しているので、その対象となる1年間が全員バラバラになってしまいます。福島さん、管理が大変になりそうだよね?
福島さん:
はい、現状でも個別に管理はしていますが、今後、対象期間の終わりの方になって「全然取れてない!」なんてことがないようにしないといけないですね(笑)。と、言うのは簡単ですが、実務は煩雑だと思います。
大熊社労士:
そうですよね。今回の年休の取得義務化への対応としては、「取らせ方」と「管理方法」の両面から検討することが重要です。
服部社長:
なるほど、この問題に関してはとかく「どのように5日の年休を取得させるか」という点に議論が向きがちですが、確かに管理方法についてもしっかり検討しておかないといけないな。当社も総務に人員が豊富にいる訳ではないからな。
大熊社労士:
そうですね。管理負担の軽減という点から、今後注目されると予想されるのが年次有給休暇の斉一的取り扱いです。
宮田部長:
斉一的取り扱い?何ですか、それ?
大熊社労士:
はい、もう少し一般的な言い方をすると「一斉付与」ということになります。斉一的取扱いとは、全従業員について、例えば4月1日など一律の基準日を定めて年次有給休暇を与えることを言います。
福島さん:
そんなことをしてもいいんですね!それが出来ると管理は劇的に軽減されますよ!
大熊社労士:
労働基準法は最低限の労働条件を定めたものですから、それを上回る取り扱いであれば問題なくできることになります。具体例を出しましょう。全社一律で年休を付与する基準日を4月1日に設定したとします。その前提で、例えば4月1日に新入社員が入社し、初回の年休は法律どおり、6ヶ月後の10月1日に10日を付与します。
福島さん:
それは現在の当社の運用と一緒ですね。
大熊社労士:
はい、そのとおりです。その場合、法律で言えば、次の11日の付与は翌年の10月1日になりますが、その前に基準日の4月1日が到来しますから、そのタイミングで11日の年休を前倒しで付与することになります。
福島さん:
なるほど、労働基準法は最低限の労働条件を定めている訳ですから、それよりも有利に前倒し付与をすることで基準日を合わせるのですね。
大熊社労士:
そのとおり。さすが福島さん、理解が早い!
服部社長:
確かにそれで基準日を全社統一にできますが、会社としては年休の付与日数は増えますし、社員の間でも損得は出そうですね。例えば、毎月1日入社だとすれば、一番得をするのは9月1日入社ですね。9月1日入社の社員は、翌年の3月1日に10日の年休が付与され、翌月の4月1日にはさらに11日。2ヶ月で21日の年休が付与されることになってしまう。
大熊社労士:
そうなのです。逆に10月1日入社の場合には、翌年4月1日に10日が付与され、次の11日が付与されるのは1年後の4月1日になります。
服部社長:
まあ、年に1回の基準日を設ける以上、それは仕方ないか。管理の簡便さとのトレードオフになりますね。
大熊社労士:
そのとおりです。従来も社員数が多い会社では、管理を簡便化する目的からこの斉一的取り扱いを採用しているケースが結構見
られました。今回、5日間の取得義務化の管理負担を減らすために、更に導入を検討する企業は増加すると予想しています。
宮田部長:
管理負担という点では間違いなく効果がありますが、取得促進という点でも意味があるのではないですか?例えば、○月は取得促進月間というようなキャンペーンを行う場合でも、対象期間が同じ方がやりやすいですから。
大熊社労士:
そうですね。更には労使協定を締結し、計画的付与を行う場合にも斉一的取り扱いである方がやりやすいと思います。とはいえ、服部社長のご指摘にもあったようなデメリットも存在しますので、トータルでどう判断するかですね。
服部社長:
わかりました。確かにメリット、デメリットともにあるが、全体としてどうか、社内で議論してみよう。宮田部長、まずは総務として案を考えてもらえないか?
宮田部長:
承知しました!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は年次有給休暇の斉一的取り扱いについて取り上げました。今回の法改正に伴い、この取り扱いを採用する企業が増加するのではないかと予想していますが、その際には就業規則の改定が必要となります。もし来年4月からの導入とすればあと半年強しかありませんので、早めの検討をおススメします。
関連blog記事
2018年9月3日「2019年4月より年5日の年次有給休暇取得が義務付けられます」
https://roumu.com/archives/65800703.html
参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
厚生労働省「年次有給休暇ハンドブック」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/040324-17a.pdf
島根労働局「働き方・休み方の改善に役立つ様式・ひな型など」
https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/_109553/roudoujikan-sankousiryou.html
(大津章敬)
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