年次有給休暇管理簿には何を記載すればよいのでしょうか?

 朝晩の寒暖差で少し風邪気味ながら大熊は服部印刷に向かった。

宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。あれ?お風邪ですか?
大熊社労士:
 はい、朝晩の寒暖差で体調を崩してしまいました。あ、インフルエンザではないのでご安心くださいね。
福島さん:
 今年のインフルエンザの拡がりはすごい勢いでしたよね。
宮田部長:
 うちの会社でも例年より多く罹患していたよね。やっと静まり始めた感じだけど。さて、今日は、年次有給休暇(年休)の取得義務化については色々お話を聞いていいて、ふと、以前、「年次有給休暇管理簿」を作ることになるというお話を思い出しました。あれって実務ではどのようなことをしなければならないのですか?
大熊社労士:
 あれからずっとご説明をしていませんでしたが、法令を確認すると、労働基準法施行規則に以下のような規定が新設されました。
第24条の7
 使用者は、法第39条第5項から第7項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第55条の2において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければならない。
 この規定に沿って、年次有給休暇管理簿を作成・保存してくださいね、となるのです。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士大熊社労士:

 それで、実務として行わなければならないこととしては、この条文に規定されているように、時季、日数および基準日をまとめた管理簿を作ることになります。
福島さん:
 ①時季、②日数、③基準日ですね。①の時季というのは年休を取得した時季(日)ということでしょうか。
大熊社労士:
 はい、その通りです。具体的にはこのリーフレットのP6~7にかけて分かりやすく記載されているのですが、①の時季は「年次有給休暇を取得した日付」になります。管理簿の例を見ると、日付の記載のみになっているので、従業員が取得時季を指定したのか、会社が取得時季を指定したのかということ等の記載までは求められていません。年休は、1日単位・半日単位・時間単位とあるので、半日単位で取得したときにはその回数、時間単位で取得したときには取得した時間数を記載することになります。
宮田部長:
 ②の日数というのは、例えば、2月12日の1日だけ取った、2月18日から20日までの3日間取ったということですか?
大熊社労士:
 私も最初、そのように思ったのですが、リーフレットを見ると、基準日から1年以内の期間における年休取得日数を記載することになっています。
宮田部長:
 ということは年休が付与されてから、現在、何日取っているかが分かるようにということですね。
大熊社労士:
 そうですね。取得義務化となる5日がちゃんと取れているかの判断をするときに使うということなのでしょう。ちなみに基準日が2つあるケースも出てきますが、このときには、1つ目の基準日から2つ目の基準日の1年後までの期間の取得日数を記載することになります。
福島さん:
 ③の基準日は、年休を付与する日ということですね。
大熊社労士:
 そうですね。これまでは「付与日」という表現もよくしていましたが、今回の年休取得義務化で基準日という表現が用いられるようになりましたね。この基準日について、2つあるときには2つとも記載する必要があります。
福島照美福島さん:
 了解しました。実際には、勤怠管理のシステムから、これらの要件を満たした帳票が出せるようにしてもらうことが現実的なのかなと思っていたのですが、それでも問題ないのですよね?
大熊社労士:
 はい。通達には、労働者名簿、賃金台帳と同様の要件を満たした上で、電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調製することは差し支えない、としているので、労働基準監督署の調査のときなどにすぐに提示できる状況であれば問題ないのでしょう。
宮田部長:
 じゃぁ、あれだね、勤怠システムの会社に対応済みかを確認しておこうか。
福島さん:
 そうですね。後ほど、私のほうでしておきますね。ちなみに、保存期間は労働者名簿などと同じで3年間になりますか?
大熊社労士:
 はい、その通りです。労働者名簿や賃金台帳とあわせて調製することもできます。ただし、労働者名簿や賃金台帳とは少し異なる点があります。
宮田部長:
 ん?なんですか?
大熊社労士:
 労働基準法第109条では、記録の保存として「労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。」と規定しているのですが、今回の年次有給休暇管理簿はこの規定における「重要な書類」には該当しないとしています。
宮田部長:
 へ~、そうなんですね。でも、重要な書類に含まれないからといって、管理しなくてもいいわけではありませんよね?
大熊社労士:
 はい、そうです。実は労働基準法第109条には罰則として、法違反した場合に30万円以下の罰金が科せられることがあります。この罰則の適用にはならないという意味だと解釈しています。ただ、もちろん、管理簿の作成・保存は義務となっているので、確実に行ってくださいね。
福島さん:
 承知しました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。年次有給休暇管理簿のフォーマットは、リーフレットに掲載さていますが、特に書式が定まっているわけではありません。システムで出力できるようにするほか、従業員からの申請・管理する様式を変更して、必要事項が管理できるような仕組みにすることも考えられるため、自社で使いやすいように変更することも考えましょう。


関連blog記事
2019年2月1日「年休取得義務化に対応した年休管理台帳がダウンロードできます」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52165580.html
2017年9月18日「働き方改革推進のための法改正が具体的に動き始めました」
https://roumu.com/archives/65785098.html
参考リンク
厚生労働省「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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