従業員の過半数代表者の選任は適正にできていますか?
膨らみはじめた桃の花のつぼみを見ながら、大熊は「春も近いな」と感じていた。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。2月は逃げるなんていいますが、本当にあっと言う間に過ぎましたね。
大熊社労士:
そうですね。私も働き方改革が施行される関係で、いつもよりも多くのご相談をいただいてきました。やはりたいへんでしたね。
福島さん:
やはりそうなのですね。実は私からも・・・
大熊社労士:
あ!もちろん、お気軽にお聞きください!
福島さん:
ありがとうございます。3月になったので、来年度の36協定を作ったので念のために見てもらいたいと思っていました。お願いできますか。
大熊社労士:
もちろんです。ふむふむ、ここもOKだな。
宮田部長:
福島さん、書式って前のものを使っていたんだよね?
福島さん:
はい。当社は中小企業なのでこれまでと同じ様式です。内容も部長とお話したように、今年度と同じ内容にしました。もちろん、残業削減は重点テーマになりますが、まだまだ特別条項をなくすようなレベルには進めませんよね。
宮田部長:
そうだね。これから1年、先を見通しても何が起こるかわからないしね。
大熊社労士:
よし、っと。内容は問題ありませんよ。
福島さん:
ありがとうございます。
大熊社労士:
ところで、従業員の代表はどなたにされる予定ですか?
宮田部長:
んー、製造部の林くんかな。彼であれば問題ないだろうし。
福島さん:
そうですね。
大熊社労士:
ちょっと待ってくださいね。その林さんはどうやって選ばれたのですか?
宮田部長:
彼は管理職にはなっていないし、勤続は長いし、従業員のみんなからも信望が厚いし。だからと言って会社に「物申す!」という感じでもないし。従業員の代表といったら彼が適任かなと。
福島さん:
あ!もちろん、ちゃんと全従業員に選んでもらうという手続きはちゃんとしますけどね。
大熊社労士:
了解です。ただ、その手続き、しっかりとやってくださいね。
宮田部長:
ん?どういうことですか?
大熊社労士:
実は今回の働き方改革の関係で、従業員代表の選任について少し変更がありました。と言っても選任方法が変わったわけではありません。
福島さん:
どこが変わったのでしょうか。
大熊社労士:
はい。今回関連する部分の改正は、36協定等を締結するときに選出する従業員の過半数代表者をについて、「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」というのが、労働基準法施行規則に明記されました(第6条の2)。
宮田部長:
そっか、「林くんがなるかなぁ」というのは私たちの勝手な思いでいいのかも知れないけど、本来は従業員が選ぶものだから、当然、私が林くんを指名するようなことがあってはいけないということですね。
大熊社労士:
そうですね。これまでは、会社側が指名するといった不適切な取扱いがみられていた要です。通達レベルで注意がうながざれ、指導もされてきたのですが、今回は規則に盛り込まれていますので、その効果はこれまでとまったく異なります。
福島さん:
確かにそうですよね。私も、うっかり「林さん今年もよろしくお願いします。」と言いそうになってしまいそうですので注意します。
大熊社労士:
そうですね。細かな点ですが、でも、仮に過半数代表者の選出が違法だということになると、36協定の締結自体が無効と言われかねません。朝礼などで、選出のための場を作ることは会社として重要なことですが、選出自体は従業員に任せるようにしなければなりません。
宮田部長:
形式的にやってきたものも、本来の意味を従業員に知らせていく必要があるのでしょうね。
大熊社労士:
本当にそう思います。36協定はどのようなものかを説明することで、「残業をさせられている」という意識
や「残業を制限されている」という意識を少しでもなくしていくことも必要だと思います。
宮田部長:
承知しました。適正にできるように注意しますね。ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。従業員の過半数代表者となる従業員がなかなか立候補で現れないという悩みを持つ企業もあります。しかし、過半数代表者の選出についてより厳格に見られるようになっているため、今後は過半数代表者がどういうものかも含め、従業員に説明し、また、会社が選出する(できる)ものではないことを伝えていく必要があるのでしょう。なお、36協定届を提出したときに選出方法が適切かも確認されるようです。
関連blog記事
2019年1月8日「働き方改革関連法 改正労働基準法・改正労働安全衛生法等のQ&Aが掲載された通達が発出!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52164368.html
参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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