自動車運転者使用事業場の監督指導結果 83.1%の事業場で労働基準関係法令違反

 平成30年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して実施された監督指導や送検等の状況について取りまとめが、先日、公表されました。そのポイントは以下のようになっています。
監督指導を実施した事業場 6,531事業場
 このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、5,424事業場(83.1%)
 改善基準告示※違反が認められたのは、4,006事業場(61.3%)
※「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)

 そして、主な労働基準関係法令違反事項を見てみると以下のとおりです。
労働時間(55.5%)
割増賃金の支払(21.1%)
休日(4.4%)

 一方、主な改善基準告示違反事項については、以下のようになっています。
最大拘束時間(46.4%)
総拘束時間(38.8%)
休息期間(32.4%)

 また、この公表結果には監督指導の事例が掲載されており、長時間労働を行わせているおそれのある運送会社に対して以下の監督指導が実施されています。
[概要]
・運転者について、1日の拘束時間が最長16時間を超え、1か月の総拘束時間が最長315時間、また、1か月120時間を超える時間外労働の実態が認められた。
・健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴いていない。

[指導内容]
(1)36協定の限度時間を超えて、違法な時間外労働を行わせていたため、是正を指導した。また、過重労働による健康障害防止対策として長時間労働の削減について併せて指導した。
(2)運転者の1日の拘束時間が16時間及び1か月の総拘束時間が293時間を超えていることについて是正を指導した。
(3)健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴くよう是正を指導した。

[指導後の会社の取組]
・荷主と交渉し、配送ルートを改善した結果、拘束時間が短縮された。また、時間外労働時間の実績を月内に適切に把握し、月80時間を超えそうな場合には運転者を交代させること等により、特定の運転者の拘束時間が長くならないよう勤務体制の見直しを行った結果、時間外労働が36協定の限度時間以内かつ80時間以内、1か月の総拘束時間が293時間、1日の拘束時間が16時間以下となった。
・健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置に関して医師の意見を聴取した。

 このように荷主と交渉が必要になることもあり、現場ではなく会社組織としての対応も求められます。また、2019年7月1日より、荷主の理解・協力を得て、トラックドライバーの働き方改革・法令遵守を進めるための改正がスタートしていることからも、荷主となる企業側もこの改正内容をふまえた対応が求められます。


関連blog記事
2019年6月27日「改正貨物自動車運送事業法〈荷主関連部分〉 荷主の理解・協力を得て、トラックドライバーの働き方改革・法令遵守を進められるようにするための改正が行われました」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51574711.html

参考リンク
厚生労働省「自動車運転者を使用する事業場に対する平成30年の監督指導、送検等の状況を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06105.html

(福間みゆき