コメダと中国のコーヒー文化

 上海の自宅から徒歩で10分くらい行ったところに高島屋上海店があります。地下鉄10号線の伊犁路という駅と直結しているので通勤などでよく店舗の前を通るのですが、その横には上海のコメダ珈琲があり、会社に行く前に利用しています。メニューは日本のコメダと同じように、シロノワールなどもあって、店の雰囲気も日本の喫茶店の様相を醸し出しているので、結構落ち着いて過ごすことができます。

 中国では2000年に入ってから、それまでのお茶に代わってコーヒー文化が市民たちの間で席巻し始め、スターバックスなどの外資専門店も店舗数を増やし続けています。ただ中国人の間では古くから、味の濃いコーヒーは身体によくないという認識が蔓延しているため、「美式(アメリカン)」と呼ばれる風味の薄いコーヒーが一般的で、スターバックスやマクドナルド、ケンタッキーなどでサーブされるコーヒーはことごとく薄めのものになっています。苦みがしっかりしたコーヒーが好きな私としては中国のコーヒー文化にいささか不満を抱いていましたが、そこに割って入ってきたコメダは日本同様、かなりきつめの苦さを提供しているため、今では薄めの味にへきへきしていた日本人駐在員たちの憩いの場となっています。中国では冷たいものも身体に悪いと言われているので、野菜も炒め物が多く、サラダなどは敬遠されがちですが、中華料理だけでなく、外国から門戸を開けて入ってきた食文化でも、伝統的な中国流の味わい方があるのはおもしろいものです。(清原学)