厚生労働省は労働時間管理でログ等の確認を重視し始めているようです

 最近、朝晩は少し涼しくなり、秋の近づきを感じている大熊であった。


大熊社労士:
 おはようございます。
宮田部長宮田部長:
 大熊先生、おはようございます。最近、朝晩はだいぶ涼しくなってきましたね。まだまだ昼の時間帯は暑いですけど。
大熊社労士:
 そうですね。もう来週には9月ですからね。そろそろ夏も終わりますね。さてさて、今日は労働時間管理に関するお話をしたいと思っています。
服部社長:
 労働時間管理ですか。具体的にはどのような話でしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、先日、厚生労働省は「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」という資料を公表しました。要は労働基準監督署の指摘によって賃金不払いの是正を行った企業の状況をまとめたもので、結論としては概ね例年並みの水準だったということになりますが、今日ご紹介したいのはその資料に添付されている「賃金不払残業の解消のための取組事例」というものです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000536139.pdf
服部社長:
 取り組み事例ですか?
大熊社労士:
 はい、そうです。ここでは4つの事例が掲載されていますが、こういった事例というのはこういう方向で取り組んで欲しいという厚生労働省からのメッセージだと考えられます。
服部社長:
 なるほど。法的な拘束力はないものの、事実上の指導として方針を示しているということですね。確かにそのように言えるかも知れません。
大熊社労士:
 そうなのです。そこで気になったのが、以下のような記述です。
生体認証による労働時間管理システムの記録と入退館記録との間にかい離があった場合は、部署の管理者に対し、書面により指導を行うこととした。
会社は、パソコンのログ記録や金庫の開閉記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
店長が定期的に、労働時間の記録と警備システム記録を照合してかい離がないかを確認し、かい離があった場合は、その理由を確認するとともに、本社の総務担当者がダブルチェックを行うこととした。
自己申告の記録とパソコンのログ記録との間にかい離があった場合は、上司がその理由を確認する仕組みを導入した。
福島照美福島さん:
 大熊先生、これらってすべて通常の労働時間の記録とは別の客観的な記録との照合を行うという内容ですよね。入退館記録にパソコンのログ、金庫の開閉記録、警備システム記録などなど。
大熊社労士:
 そうなのです。4つの事例のすべてにそのような対策が入っているのです。近年は労働基準監督署の監督指導においてアクセスログが問題になることが多いのですが、今後、更にそのような流れが強まるのかも知れません。
服部社長服部社長:
 なるほど。当社の場合は不払いはないと思っていますが、もしかすると勤怠管理システムの打刻に問題があり、乖離が発生していることがあるかも知れません。宮田部長、どこかのタイミングで抜き打ちチェックをしてみましょうか。
宮田部長:
 分かりました。毎月全員のチェックを行うのは大変なので、まずはタイムカードの打刻時間を確認し、問題がありそうな社員を中心に抜き打ちで確認してみます。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は厚生労働法が作成した「賃金不払残業の解消のための取組事例」を取り上げてみました。現在はIT化が進んだことから、様々な時間が自動的に記録される時代となっています。先ほど挙げたもの以外でも、例えばメールの送受信時刻などもあるでしょうし、場合によっては最寄り駅を交通系ICカードで通過した時刻なども記録に残っています。どこまで厳密に行うかは別として、アクセスログなどの時間と把握している労働時間に大きな乖離が発生しないよう、社員に注意喚起を行うと共に、なんらかの理由により差異が発生する場合にはその理由を申告させるなどの対応も行っておきたいものです。


参考リンク
厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06128.html

(大津章敬)