民法改正により身元保証契約に大きな影響があります

 10月になったというのにこの暑さ。なによりも暑いのが苦手な大熊にとっては厳しい秋となっている。


大熊社労士
 おはようございます!
服部社長服部社長
 おはようございます。10月になったというのに毎日暑いですね。せっかくのいい季節なのですから、公園でゆっくり読書でもしたいのに、まだそんな気温ではないですね。
大熊社労士
 本当にそうですね。さすがに夜は少し涼しくなりましたが、昼間はまだBBQと生ビールといった雰囲気です。
福島さん
 そう思って、応接室の冷房は少し寒いくらいにしておきましたよ(笑)。
大熊社労士
 そうだったのですね、ありがとうございます。部屋は涼しいです(笑)。さて、今日は来春(2020年4月)の民法改正の影響についてお話しようと思っています。
服部社長
 民法ですか。
大熊社労士
 はい、民法は来年4月に制定以来121年ぶりと言われる抜本改正が行われます。人事労務管理にも影響がある部分があるのですが、その中でも今日は身元保証に関する影響をお伝えします。宮田部長、社員を採用する際、身元保証書を取っていらっしゃいましたよね?
宮田部長
 はい、昔からもらっています。
大熊社労士
 身元保証契約というのは、その従業員がなんらかのトラブルを起こし、会社に損害を与えた場合に、連帯してその賠償を行うというものです。今後、身元保証人にそのような賠償責任を負わせる場合には、その限度額(極度額)を定めておかなければならないことになります。
福島照美福島さん
 ということは例えば、1,000万円まで賠償させることがあるといったようなことを身元保証書に記載しないといけないということなのですか?
大熊社労士
 要はそういうことです。
宮田部長宮田部長
 えーっ!そんな生々しいことを書いたら、誰も身元保証人になってくれなくなるのではないですか?現状でも身元保証人がいないのでどうしたらいいかという話が多いのに。
大熊社労士
 ですよね。だから影響があるとお伝えしているのです。今回の民法改正では個人保証人の保護を強化することが大きな目的となっているので、いわゆる根保証契約に関しては極度額を定めなければならないとしているのです。
服部社長
 なるほど、それでは当社としてどうするかという議論が必要になりますね。う~ん、宮田部長。そもそも、これまでこの身元保証契約に基づいて身元保証人になんらかの賠償を請求した事案なんてあっただろうか?
宮田部長
 いや、ないと思います。ただ、急に欠勤した場合に連絡をしたり、病気休職中にその健康管理の指導をお願いしたりといったことはあったと思います。
服部社長
 やはり、そうだよな。大熊さん、そもそも身元保証人は必要なのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士
 ポイントはそこですよね。今回の法改正を機に、そもそも身元保証人は必要なのか、またその目的は何なのかを検討するのがよいと思います。
服部社長
 極度額について、本当に大きな損害などが発生することもなくはないので、例えば1億円などに設定したとしたら、身元保証人になど誰もなってくれないでしょう。かといって数十万ではあまり意味はない。であるとすれば、金銭面の賠償は求めず、その従業員が健康かつ真面目に職務に取り組んでもらうような生活面の指導などをお願いするような内容で見直してはどうかと思います。大熊さん、どうでしょうか?
大熊社労士
 私も同意見です。身元保証の制度は多くの企業で既に形骸化していますので、いまのお話のようにゼロベースで再検討するのがよいのではないでしょうか。
服部社長
 わかりました。宮田部長、それではいまの方向性案をまとめてもらえますか?
宮田部長
 はい、承知しました!

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は来春に行われる民法改正の中から、身元保証契約に関する影響と対応について取り上げました。労働法ではないことから、どうしても対応が遅れがちになっているケースが多いように感じていますが、現実にはかなり影響が大きな改正ですので、早めに対応を進めることが望まれます。

[関連条文]
改正第465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)
 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2.個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3.第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。


参考リンク
法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」
http://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf

(大津章敬)