派遣労働者の同一労働同一賃金「労使協定方式に関するQ&A【第2集】」が公開

 2019年8月20日のブログ記事「派遣労働者の同一労働同一賃金「労使協定方式に関するQ&A」が公表」でご紹介したように、派遣労働者の同一労働同一賃金はその取扱いの判断に迷うことが多く、様々な疑義が生じる状態にあり、厚生労働省がQ&Aという形で回答を示していました。

 これについて、Q&Aの第2版が公開されると言われていましたが、2019年11月1日に、「労使協定方式に関するQ&A【第2集】」という形で公表されました。

 今回は、「問」の内容としては以下のとおりとなっています。来年(2020年)4月に施行が近づいてきていますので、これらを確認の上、対応を進めましょう。

1.労使協定の締結
問1-1 現在、協定対象派遣労働者の賃金の額が一般賃金の額を上回るものとなっている場合、一般賃金の額の水準に変更する対応は可能か。

問1―2 現在、協定対象派遣労働者の基本給等が一般賃金の額を上回るものとなっている場合に、通勤手当等を新たに支給する一方で、基本給を引き下げ、派遣労働者の賃金の総額を実質的に引き下げることは可能か。

問1-3 労使協定を締結する際に協定対象労働者の範囲を定めることとなっているが、派遣先の希望等により、個別に、協定対象派遣労働者の待遇決定方式を派遣先均等・均衡方式に変更することとしてもよいか。

問1―4 「協定対象派遣労働者の範囲」について、一の事業所において、原則はその全ての派遣労働者に「労使協定方式」を採用するが、紹介予定派遣の対象者のみ、派遣先均等・均衡方式とすることは問題ないか。

2.基本給・賞与・手当等
問2-1 固定残業代は、一般賃金と同等以上を確保する協定対象派遣労働者の賃金の対象としてよいか。

問2-2 派遣元事業主が地域指数を選択する際、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は具体的にどのように判断すればよいか。

問2-3 協定対象派遣労働者が複数の地域に派遣される可能性がある場合、一の労使協定において、複数の地域指数を乗じた一般賃金の額を記載するとともに、それぞれの一般賃金の額に対応する協定対象派遣労働者の賃金の額を記載し、同等以上であることを確認する必要があるのか。

問2-4 賃金テーブル上、職務のレベルに応じて等級を設けるとともに、昇給レンジとして号俸を設けている。その際の能力・経験調整指数の当てはめ方はどうなるのか。

問2-5 令和元年8月19日付けのQ&A問2-7において、能力・経験調整指数が「4年」、「8年」、「15年」などになった場合の取扱いが整理されているが、例えば、労使で議論した結果、協定対象派遣労働者の業務の内容、難易度等が一般の労働者の勤続「0.5年(半年)」目相当に該当すると判断した場合、年数より更に細かく区切った能力・経験調整指数を使うことは可能か。

問2-6 協定対象派遣労働者の賃金について、月給から時給に換算する際の計算方法が令和元年8月19日付けのQ&A問2-1に示されているが、1円未満の端数が生じた場合はどのように処理すればよいか。

<※3は今回は未掲載>

4.退職金
問4-1 局長通達第3の3(1)「退職手当制度で比較する場合」について、協定対象派遣労働者の勤続期間の通算方法は、どのように定めればよいか。

問4-2 一つの労使協定で、「退職手当制度で比較する場合」と「一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する場合」の両方式を定める予定であるが、局長通達第3の3(1)では、退職手当制度は「全ての協定対象派遣労働者に適用されるものであること」とされている。これについては、局長通達第2の3(1)「退職手当制度で比較する場合」で支払うことを選択した協定対象労働者全員に適用されていればよいという解釈か。

問4-3 局長通達第2の3(1)「退職手当制度で比較する場合」で支払うことを選択した場合、一般退職金と協定対象派遣労働者の退職金を比較する際は、モデル退職金やモデルの所定内賃金で比べればよいか。

問4-4 令和元年8月19日付けのQ&A問4-3では、一般退職金と比較する場合、協定対象派遣労働者の支給月数は協定対象派遣労働者の退職時の「所定内賃金」額を用いるとあるが、この所定内賃金に含まれる賃金は何か。

問4-5 令和元年8月19日付けのQ&A問4-3では、一般退職金と比較する場合、協定対象派遣労働者の支給月数は協定対象派遣労働者の退職時の「所定内賃金」額を用いるとあるが、派遣元事業主の退職手当制度の算定基礎となる賃金と一致していない(基本給を算定基礎としている場合など)こともある。その際はどのように一般退職金の支給月数と比較すればよいか。

問4-6 局長通達の別添4に「退職給付等の費用」のデータが載っているが、どのように使うことを想定しているか。

問4―7 局長通達第3の3(3)「中小企業退職金共済制度等に加入する場合」について、「この「等」には、例えば、派遣元事業主が独自に設けている企業年金制度が含まれるものであること」とされている。企業が独自に設けている退職一時金の費用を事業主が負担している場合、局長通達第3の3(3)「中小企業退職金共済制度等に加入する場合」として取り扱うことは可能か。

問4-8 局長通達第3の3(3)「中小企業退職金共済制度等に加入する場合」について、確定給付企業年金等と併用して、企業が独自に設けている退職一時金を協定対象派遣労働者に支給しているが、両者の掛金等を合算して、一般退職金(一般基本給・賞与等に6%を乗じた額)と比較することは可能か。

問4-9 局長通達第3の3(3)「中小企業退職金共済制度等に加入する場合」については、協定対象派遣労働者の一般基本給・賞与等の総額の6%と同等以上の掛金拠出であればよいか。

問4―10 退職金を支払っていない場合に、一般賃金の額と同等以上の額を確保するためには、どうすればよいか。

 なお、2020年4月1日以降の「労働者派遣事業関係業務取扱要領・様式・各種報告書」も既に公開されており、以下から内容をご確認いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html


関連blog記事
2019年8月20日「派遣労働者の同一労働同一賃金「労使協定方式に関するQ&A」が公表」
https://roumu.com/archives/97421.html

2019年8月7日「厚労省から人材派遣協会に出された無期転換時の通勤手当と基本給の取扱いに関する通達」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52174915.html
2019年7月31日「分かりやすい同一労働同一賃金の解説資料が山形労働局から公開されました」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52174617.html
2019年7月10日「派遣労働者の同一労働同一賃金において労使協定方式を用いる場合の賃金水準が公開されました」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52173624.html

参考リンク
厚生労働省「労使協定方式に関するQ&A【第2集】 令和元年11月1日公表」

https://www.mhlw.go.jp/content/rk2.pdf

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/