来年6月のパワハラ防止措置法制化に向けた指針の内容が明らかになりました

 最近、パワハラに関する報道が多くなっていると感じている大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます。
服部社長服部社長
 おはようございます。今朝は少し冷えますね。大熊さん、風邪とかひいてはいらっしゃいませんか?インフルエンザも今年は流行が早いようなので、注意してくださいね。
大熊社労士
 ありがとうございます。少し鼻が詰まっていますが、風邪というほどではありません。年内、まだまだ講師をする機会も多いので、注意しています。さてさて、最近新聞などを見ているとパワハラに関するニュースが多いとは思いませんか?
宮田部長宮田部長
 そうですよね。教師のいじめの問題もかなり話題になりましたが、先週あたりですと大手自動車メーカーのパワハラ事件で労災認定されたなんていう記事も目にしました。やはりこのような問題は増えているのですか?
大熊社労士
 はい、リーマンショックのときをピークにして労働トラブルは減少傾向にあるのですが、ハラスメントの問題は増加を続けています。もっともここ数年で、急に日本人が変わったなんていうことはあり得ませんので、ハラスメントに対する社会の認識が変化しているのではないかと考えています。
服部社長
 そうですよね。最近はなんでもハラスメントという傾向がありますからね。〇〇ハラといったように。
大熊社労士
 同感です。ただ、現実的に問題が増えているのは事実ですので、2020年6月(中小企業は2022年4月)に法改正が行われ、パワハラの予防措置が義務化されることとなりました。その詳細を定める指針案が先週、労働政策審議会で承認されましたので、そのポイントをお話したいと思います。
服部社長
 よろしくお願いします。
大熊社労士
 今回の指針における予防措置は基本的には従来から存在したセクハラやマタハラの防止措置に準じています。要は、会社としてハラスメントは許さないという方針を明確化し、就業規則に規定した上で周知を行い、相談窓口を設置するといったことが求められます。
福島照美福島さん
 当社ではセクハラ、マタハラに関してはそうした措置を既に採っていますが、今回はその対象にパワハラを追加すればよいということでしょうか?
大熊社労士
 基本的にはその通りです。ただ、今回の指針ではいくつかの注意点がありますので、それをお伝えします。まずは職場におけるパワーハラスメントの内容を「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの要素を全て満たすものをいう。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。」と明確にしています。
服部社長
 「なお」以降がポイントになりそうですね。
大熊社労士大熊社労士
 はい、パワハラは、適正な指導との線引きが難しいというのが大きな問題です。よって、定義の中でこのような記載がなされると共に、6つの行為類型毎に「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」が定められました。これがなかなか論争の種になっている訳ですが、それだけ線引きが難しいということの裏返しなのだと思います。
服部社長
 そうでしょうね。個々の状況によって判断は当然変わるでしょうから、一律にパワハラかどうかを決めるというのは難しいのだと思います。
大熊社労士
 そのとおりですね。また今回は「事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容」という項が設けられています。
宮田部長
 自らの雇用する労働者以外の者に対する言動ですか?
大熊社労士
 はい、これには、(1)他の事業主が雇用する労働者及び求職者、(2)個人事業主、(3)インターンシップを行っている者が含まれます。要はいわゆるカスタマーハラスメントや求職中の学生などに対するハラスメントも問題としているのです。
福島さん
 なるほど。いずれも最近はよく問題になっていますからね。
大熊社労士
 そうなのです。御社ではこれまでの対応をアレンジすればほぼ対応は完了すると思われますが、2020年1月上旬にもこの指針が告示される予定ですので、正式なものが示されましたらまたご案内しますね。
服部社長
 よろしくお願いします。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。今回は2020年6月よりスタートするパワハラ予防措置に関する指針の内容を取り上げました。パワハラについては年々問題が深刻化しており、いざ発生した際には組織風土の悪化や人材退職などに繋がる恐れがあります。せっかく採用し、育成した社員がこのような問題で会社を去ることがないように対策を進めていきましょう。基本的には従来からあるセクハラ対策と一体での対応を進めていくことになります。またパンフレットなどが出てきた際には労務ドットコムで取り上げますので、是非ご活用ください。


参考リンク
厚生労働省「第22回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07971.html

(大津章敬)