育児休業中に退職した場合、育児休業給付金の取扱いはどうなるのでしょうか?

A 原則、退職日の属する支給単位期間は育児休業給付金が支給されず、退職日の属する支給単位期間の一つ前の支給対象期間まで育児休業給付金が支給される。

1.育児休業給付金
 育児休業給付金とは、子育てのため育児休業を取得し、給与収入がなくなる労働者をサポートするため、雇用保険から支給される給付金のことをいいます。
(1)支給要件
 この給付金は子育てをするすべての労働者に給付されるものではなく、以下の条件のすべてを満たした者に給付されるものです。
1.雇用保険に加入している。
2.育児休業前の2年間に11日以上働いた月が12カ月以上ある。
3.育児休業中に賃金(育児休業前の賃金の8割以上)が支払われていない
4.育児休業終了後に職場復帰する予定である。

(2)支給額
 支給額は育児休業の開始から以下の金額とされています。
a.180日目までは休業開始時賃金日額×支給日数×67%
b.181日目以降は休業開始時賃金日額×支給日数×50%

 つまり、育児休業が開始して半年の間は育児休業に入る前の給与の67%、それ以降は育児休業に入る前の給与の半分が支給されることになります。
 
2.育児休業中の退職
(1)退職日により異なる支給単位期間
 育児休業給付金は、育児休業開始日から1カ月ごとに区切られた期間(支給単位期間)ごとに給付されます。万が一、育児休業中に退職する場合は退職日が属する支給単位期間の一つ前の支給単位期間分で給付が終了になります。なお、退職日が支給単位期間の末日の場合は退職日が含まれる支給単位期間まで支給されます。

 なお、育児休業を開始する当初は復帰を考えていたものの、いざ育児をしてみると予想以上に負担が大きく、子育てをしながら復職することは難しいと考えが変わり、退職を選択することもあるかと思われます。このような場合であっても、既に受給した給付金について、返金を求められることはありません。
例.育児休業開始日が3月10日の場合、月の10日から翌月9日までが支給単位期間となります。
・6月8日に退職した場合→4月10日~5月9日の支給単位期間まで支給
・6月9日に退職した場合→5月10日~6月9日の支給単位期間まで支給
 
(2)不正受給
 上記1.(1)のとおり、育児休業給付金は休業終了後に職場に復帰することが予定されている労働者に支給される給付金です。よって休業開始前に退職が確定している労働者は給付金を受け取ることができません。

 仮に育児休業の開始時点で退職が確定しているにも関わらず、そのことを隠し、育児休業給付金を受給した(もしくは受けようとした)場合には雇用保険法第61条の5第1項により不正受給の処分を受ける可能性があります。また、事業主が虚偽の申請書等を申請した場合についても返還や納付命令処分を受けることもありますので、育児休業申請時には受給者本人の状況確認をしっかりと行うことが大切です。

[参考条文]
雇用保険法 第61条の5(給付制限)
 偽りその他不正の行為により育児休業給付金の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付金の支給を受け、又は受けようとした日以後、育児休業給付金を支給しない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、育児休業給付金の全部又は一部を支給することができる。
2 前項の規定により育児休業給付金の支給を受けることができない者とされたものが、同項に規定する日以後、新たに前条第一項に規定する休業を開始し、育児休業給付金の支給を受けることができる者となつた場合には、前項の規定にかかわらず、当該休業に係る育児休業給付金を支給する。

(渡たかせ)