会社の役員や取締役は雇用保険に加入できるのでしょうか?

A 会社の役員や取締役は、原則として雇用保険の被保険者となりません。ただし、使用人兼務役員で、服務態様、賃金、報酬等からみて、労働者的性格が強く、雇用関係があると認められる場合に限り、雇用保険に加入ができます。

1.使用人兼務役員とは
 使用人兼務役員とは、会社の役員や取締役であって同時に部長、支店長、工場長等の従業員としての身分を有する者をいい、行政解釈で「法人の重役で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて法第9条に規定する労働者である」(昭和23年3月17日基発461号)と示されています。

2.雇用保険適用の判断基準
 使用人兼務役員が雇用保険に加入できる判断基準は、法律上で明確に定められていませんが、労働の実態に基づき、総合的に判断されます。具体的には、(1)業務執行権又は代表権を持たない役員や取締役であること、(2)役員報酬と賃金を比べて、賃金の方が多く支払われていること、(3)出退勤時刻、休憩時間、休日等の勤怠を管理されていて、業務遂行において拘束性が認められること、(4)就業規則等が一般の労働者と同様に適用されていることが必要です。(雇用保険に関する業務取扱要領20351)

3.兼務役員の雇用保険加入手続きと実務
 兼務役員が雇用保険に加入する場合、事業主は、管轄の公共職業安定所に「兼務役員雇用実態証明書」と定款・取締役会議事録・組織図・就業規則・賃金台帳等の雇用の実態が確認できる書類等を提出しなければなりません。これらの記載内容と判断資料を総合的に勘案し、役員としての性格よりも労働者性が強いと認められた場合、雇用保険における使用人兼務役員であると判断され、被保険者となることができます。なお、雇用保険料の算定対象となる賃金は、「役員報酬」の部分は含まれず、労働者としての「賃金」部分のみとなります。そのため、失業した場合における失業給付の算定の基礎となる賃金には、取締役としての地位に基づいて受ける「役員報酬」は含まれないので注意が必要です。

(岡田千佳)