育児休業等により賞与算定期間の一部しか出勤していない従業員の賞与を不支給とすることはできますか?

A 法令により、産前産後の休業及び育児休業などの申出・取得を理由とする不利益扱いは禁止されているため、産前産後の休業中又は育児休業中(以下、産休中または育休中)であるという事実のみに基づいて、賞与をまったく支給しないということはできません。

1.不利益扱いの禁止
 妊娠・出産等に関しては男女雇用機会均等法で、育児休業の申出・取得に関しては育児・介護休業法でそれぞれ不利益な取り扱いの禁止を定めています。賞与算定期間中の取扱いとして、産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたことまたは産後の就業制限の規定により就業できず、もしくは産後休業をしたことを理由に、賞与において不利益な算定をすることは男女雇用機会均等法の不利益扱いに該当します。   

 また同様に、育児休業の請求若しくは、取得を理由に賞与において不利益な算定をすることも、育児介護休業法の不利益扱いに該当します。

2.産休中または育休中の賞与の取扱い
 産休中まはは育休中の賞与の取扱いについては、賞与の査定方法によって異なります。

 仮に、賞与の査定が算定期間における営業案件の受注件数や売上額などではなく、勤怠成績に基づいて行われる場合には、当該従業員のように算定期間6か月のうち、1か月出勤した際に「ほとんど産休中または育休中で出勤せずあまり貢献していないため、賞与は支払わない」とはならないでしょう。

 上記の理由により、賞与をまったく支払わないというのは、産休中または育休中であるという事実のみに基づいて賞与の不支給を決定しているため、賞与における不利益な扱いに該当すると考えられます。

 このようなケースでは、1か月分しか勤務していないにも関わらず、賞与を全額支給する必要まではありませんが、少なくとも算定期間のうち、産休中または育休中の期間は算定対象期間から除くとしても、出勤がある1か月分については、日割計算をして勤務した日数分の賞与を支払うことが必要でしょう。

[参考法令]
男女雇用機会均等法 第9条第3項
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

育児・介護休業法 第10条
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(野村悠太)