就業規則と労働契約書の労働条件が異なるとき、どちらが優先されますか?

A この場合には就業規則の内容が優先されます。ただし、労働契約書の内容が就業規則の基準を上回っている場合は、労働契約書が優先となります。つまり、従業員にとって有利なルールが労働契約において優先されます。

1.労働契約の締結
 会社が従業員を採用する際には、労働契約の締結が必要になります。労働契約は、従業員が会社に使用されて労働し、会社が労働の対価として賃金を支払うことについて、会社と従業員が、互いに合意することで成立する契約です。この労働契約の締結に際し、会社は従業員に対して賃金、労働時間などの労働条件を明示しなければなりません。なお、労働条件のうち(1)労働契約の期間(2)期間の定めがある契約を更新する場合の基準(3)就業場所、仕事の内容(4)始業・就業時刻、所定労働時間外の労働の有無、休憩時間、休日、休暇(5)賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切、支払時期に関すること(6)退職に関すること(解雇の事由を含む)の6つの項目については、書面などで交付する必要があります(労働基準法15条)。

2.労働契約と就業規則の関係
 一方、就業規則とは、職場内で守られるべき規律や共通の労働条件など職場での統一的なルールを定めたものです。労働契約において、労働条件を詳細に定めていない場合や就業規則を下回る労働条件を提示された場合は、会社が合理的な労働条件を定めた就業規則を従業員へ周知していれば、就業規則の法的効力が生じます(労働契約法7条)。

3.無効となる労働契約
 労働契約法12条では「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による」と規定しています。したがって、労働契約書などの書面において、明確に労働条件を定め、会社と従業員が合意していたとしても、就業規則よりも低い基準を定める部分は、就業規則に抵触することにより、その労働契約は無効となります。

 採用の際は、就業規則を確認した上で、労働契約書を作成するように注意しましょう。

(岡田千佳)