年次有給休暇を時間単位で取得させることは可能か?

A 一定の要件を満たせば、年次有給休暇を時間単位で付与することは可能です。

1.時間単位年次有給休暇の位置づけ
 年次有給休暇の時間単位付与について、厚生労働省の通達(労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成21年5月29日 基発第0529001号))では、以下のような趣旨であることが述べられています。
「法第39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨から、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定している。この年次有給休暇については、取得率が五割を下回る水準で推移しており、その取得の促進が課題となっている一方、現行の日単位による取得のほかに、時間単位による取得の希望もみられるところである。このため、まとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇制度本来の趣旨を踏まえつつ、仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定により、年次有給休暇について五日の範囲内で時間を単位として与えることができることとしたものであること。」

 実際の労務管理の現場においても、時間単位の年次有給休暇へのニーズは高く、導入を検討する企業も多く見られます。

2.時間単位有給休暇の導入方法
 時間単位の年次有給休暇制度を導入する場合、常時10人以上の労働者を使用する事業場ではまず就業規則に、年次有給休暇の時間単位付与について定めることが必要です。さらに、実際に時間単位年次有給休暇を運用する場合は、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で労使協定の締結が必要となります。労使協定で定める内容は、以下のとおりです。

  1. 時間単位年次有給休暇の対象者の範囲
  2. 時間単位年次有給休暇の上限日数(1年5日以内の範囲で定める必要があります)
  3. 時間単位年次有給休暇の1日分の時間数
  4. 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数

3.注意点
 労働基準法の改正により、平成31年4月より使用者には、法定の年次有給休暇の付与日数が10日以上のすべての労働者に対し、年5日の年次有給休暇を取得させる義務が課せられていますが、時間単位年次有給休暇取得分についてはその5日間から差し引くことはできません。例えば、1日の所定労働時間が8時間で週5日勤務の労働者が、時間単位有給休暇を40時間取得した場合、40時間を日単位にすると5日間となりますが、年次有給休暇取得義務の5日間には数えず、別途5日間の年次有給休暇を取得する必要がありますので、注意しましょう。

[参考法令]
労働基準法第39条第4項
労働基準法施行規則第24条の4
労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成21年5月29日 基発第0529001号)

(関野真美)