賃金請求権の消滅時効期間 2020年4月に2年から3年に伸長へ

 来春に行われる民法改正に対応して、賃金請求権の時効をどうするのかという議論が続いています。その検討会が始まったのは2017年12月ですので、労使の意見の調整が付かないまま、既に2年間が経過しています。しかし、この議論も遂にゴールが見えてきました。

 昨日(2019年12月24日)に行われた第157回労働政策審議会労働条件分科会で、賃金等請求権の消滅時効の在り方についての公益委員見解が示され、各種報道によればこの内容で同意に至る見込みとされています。公益委員見解の主なポイントは以下のとおりです。
(1)賃金請求権の消滅時効期間は、民法一部改正法による使用人の給料を含めた短期消滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5年とすべきである。ただし、当分の間、現行の労基法第109 条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とすべきである。
(2)起算点は、現行の労基法の解釈・運用を踏襲するため、客観的起算点を維持し、これを労基法上明記することとすべきである。
(3)退職手当の請求権の消滅時効期間については、現行の消滅時効期間(5年)を維持すべきである。
(4)年次有給休暇請求権、災害補償請求権など賃金請求権以外の請求権の消滅時効期間は2年間とすべきである。
(5)労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存義務については、原則は5年としつつ、消滅時効期間と同様に、当分の間は3年とすべきである。
(6)付加金については、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則は5年としつつ、消滅時効期間と同様に、当分の間は3年とすべきである。
(7)施行期日は民法一部改正法による契約上の債権の取扱いを踏まえ、民法一部改正法の施行の日(令和2年4月1日)とすべきである。
(8)経過措置としては、施行期日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権の消滅時効期間について改正法を適用することとし、付加金の請求期間についても同様の取扱いとすべきである。

 このように来春にも法改正が行われ、当面の間、賃金請求権の時効は3年とされる方向となりそうです。改めて、不払い残業代等のリスクが高まることが予想されますので、適切な労働時間の把握・管理を行うと共に、賃金の不払いがないように注意が求められます。


関連記事
2019年10月21日「賃金請求権時効の3年への延長問題において行われている議論の論点」
https://roumu.com/archives/99116.html
2019年7月25日「賃金請求権の時効の問題はその後どうなったのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/96839.html
2017年12月29日「厚生労働省 賃金請求権時効見直しにかかる検討会をスタート」
https://roumu.com/archives/52143021.html

参考リンク
厚生労働省「第157回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08597.html

(大津章敬)