労災保険法改正案 副業をする従業員が労災事故で負傷した場合の給付基礎日額の計算方法の変更

 2020年1月13日の記事「雇用保険法改正案(2)高年齢雇用継続給付の引下げと離職票の支払基礎日数の考え方の変更」では、雇用保険法の改正案について取り上げましたが、2020年1月20日から始まる通常国会では雇用保険法とともに、その他の法律も一括して提出される予定となっています。その一つに労災保険法(労働者災害補償保険法)がありますので、内容を確認しておきましょう。

 労災保険には、近年の副業・兼業をする人の広がりに対し、労災事故(通勤災害を含む)が発生したときの給付が不十分ではないかという議論があり、今回、以下のような改正が検討されています。

1.複数事業労働者に対する新たな保険給付の創設
 業務災害に関する保険給付及び通勤災害に関する保険給付と並び、複数事業労働者の複数事業の業務を要因とした負傷、疾病、障害又は死亡に関する保険給付を創設するものとすること。

2.給付基礎日額の算定方法の特例
 複数事業労働者の業務上の事由、複数事業労働者の複数事業の業務を要因とした事由又は通勤による負傷、疾病、障害又は死亡により保険給付を行う場合は、当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎として、厚生労働省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とするものとすること。

 実際に、副業・兼業をする従業員に労災事故が発生したときの手続きの流れを考えると、自社で発生した労災事故でなかったとしても、2において給付基礎日額を算定するための賃金等の情報を何らかの形で提出することが求められることになることが予想されます。いざ、副業・兼業先で労災事故が発生し、休業(補償)給付を受け取ることになると、手続きが複雑になりそうな改正といえそうです。


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2020年1月9日「雇用保険法改正案(1)2022年4月より週20時間未満の65歳以上複数就業者の雇用保険特例加入が開始へ」
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参考リンク
厚生労働省「「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」の諮問及び答申について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00004.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/