新型コロナによる1年単位の変形労働時間制協定・36協定の再締結を可能とする通達が発出

 これまでも新型コロナウイルス感染症関連として、厚生労働省のホームページに「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」が掲載されていることはご案内してきましたが、このページは頻繁に更新されており、新しい情報が追加されています。

 その中には労働時間に関することも含まれており、1年単位の変形労働時間制や36協定の結び直しに関して取り上げられてきましたが、今回、マスクの緊急の増産要請等、想定外の需要に対応する企業から、時間外労働など労働時間の取扱い関する問合せが多く労働基準監督署等に寄せられたことから、3月17日、厚生労働事務次官から都道府県労働局長に対し通達(令和2年3月17日 厚生労働省発基0317第17号「新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について」)が発出されました。概要は、人命や公益の観点からの緊急の業務については、労働基準監督署長の許可または届出による労働時間の延長ができる場合があることから、この許可または届出の手続について周知すること等について徹底を図るよう指示されたものであり、以下のように示されています。

1.中小企業等への配慮
●労働施策基本方針(平成30年12月28日閣議決定)における「その他の事情」には、新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大が中小企業等に与える影響も含まれることを明確化。
○労働施策基本方針(平成30年12月28日閣議決定)(抄)
(略)中小企業等における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情に配慮し中小企業等の立場に立った対応を行い、労働基準法、労働安全衛生法等の労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、当該中小企業等の事情を踏まえ、使用者に対し自主的な改善を促していく。

2.労働基準法第33条の解釈の明確化
●労働基準法第33条第1項(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等の延長)の対象となり得る場合を明確化。
<労働基準法第33条第1項の対象となり得る場合>※このほか、人命・公益を保護するために臨時の必要がある場合も該当し得る
○新型コロナウイルス感染症に感染した患者を治療する場合
○手厚い看護が必要となる高齢者等の入居する施設において新型コロナウイルス感染症対策を行う場合
○新型コロナウイルスの感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液、医療機器等を緊急に増産又は製造する場合

3.1年単位の変形労働時間制の運用の柔軟化
●1年単位の変形労働時間制を採用している事業場において、新型コロナウイルス感染症対策のため、当初の予定どおりに制度を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、制度の途中であっても、労使協定を締結し直すことも可能であることを明確化。

4.36協定の特別条項の考え方の明確化
●繁忙の理由が新型コロナウイルス感染症によるものである場合には、36協定の特別条項に明記されていなくとも、「臨時的な特別の事情がある場合」の理由として認められるものであることを明確化。

↓通達の概要はこちらから!
「新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(概要)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610186.pdf


関連記事
2020年3月12日「新型コロナウイルスに伴い、1年単位の変形労働時間制の労使協定が変更可能に!」
https://roumu.com/archives/101344.html

参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について」(令和2年3月17日 厚生労働省発基0317第17号)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610189.pdf
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/