新入社員を入社日から自宅待機にした場合の休業手当はどのように計算すればよいですか?

 新型コロナウイルスの感染者数の伸びが少しだけ落ち着いてきたことに、少しだけ光を感じる大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます。
服部社長服部社長
 大熊さん、おはようございます。この週末は暖かい行楽日和でしたが、Stay Homeできましたか?
大熊社労士
 はい、本当に出かけたくなるような陽気でしたね。私は雇用調整助成金の情報収集とお客様からの質問対応で就活が終わっていたという感じです。
福島さん
 そういえば雇用調整助成金の支給率が、最大10分の10になるんですよね。週末に新聞で目にしました。
大熊社労士
 はい、報道ですと支払った休業手当全額が助成金として支給されるような感じで書かれていましたが、実際にはそうではありません。それでも助成率が引き上げられるのは間違いありませんので、その詳細が公表されたらまたお話しますね。
福島さん
 ありがとうございます。
服部社長
 大熊さん、今日は休業手当のことで確認したいことがあります。当社の話ではないのですが、知り合いの会社でかなり業績が厳しいところがあり、今春入社の新入社員をずっと自宅待機させている会社があります。この会社の社長から、休業手当の支払いをどうすればよいのか相談を受けまして。
大熊社労士
 なるほど。それは大変ですね。まず休業手当の支払いが必要となります。採用内定というのは、始期付き解約権留保付労働契約が成立しているとされ、入社日である4月1日には労働契約の効力が発生していますので、ここで自宅待機をさせるとすれば、通常の社員と同様の休業手当の支払いが求められることになります。
宮田部長宮田部長
 それはそうですよね。しかし、社会に出て頑張ろうと思っていた矢先に、入社式もなく、いきなり自宅待機というのもかわいそうですね。まあ、それだけ会社の状況が悪い訳なので、仕方ありませんが。
大熊社労士
 そうですね。その会社にはなんとか持ちこたえてもらって、早い段階で新入社員を迎え入れることができるようになって欲しいですね。さて、この新入社員の自宅待機における休業手当については大きな問題があります。さて、それはなんでしょうか?
福島照美福島さん
 えーっと、なんだろう…。あ、平均賃金ってどうやって計算すればいいんだろう?だって、平均賃金って、直前の3か月間の総支払賃金から計算するじゃないですか。でも今回のケースは支払い賃金がないので。どうやって計算すればよいのですか?
大熊社労士
 さすがですね。そうなのです。平均賃金の算出が通常の方法ではできないのです。この点に関しては労働基準法施行規則4条に規定があり、なんと「都道府県労働局長の定めるところによる」とされているのです。
福島さん
 労働局長が定めるなんていうことがあるのですね。まあ、通常の計算方法が使えないから、仕方ないのか。
大熊社労士大熊社労士
 そういうことですね。それで実際に労働局長はどのように平均賃金を決めているのかということですが、この点については通達(昭和22年9月13日 発基17号)が出ています。これによれば、「当該労働者に対し一定額の賃金が予め定められている場合には、その額により推算し、しからざる場合にはその日に、当該事業場において、同一の業務に従事した労働者の一人平均の賃金額により推算すること」とされています。
服部社長
 新入社員で賃金が決まっていないことは通常ないと思いますから、その金額を基に算出されるということですね。
大熊社労士
 そういうことになります。そのようにして定められた平均賃金の6割以上の休業手当を支給することになります。
服部社長
 なるほど、よく分かりました。そのように答えておきます。ありがとうございました。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 おはようございます。大熊です。今回の新型コロナウイルスは、業績の悪化に加え、感染予防という要素もありますので、一部の企業においては新入社員研修の中止、自宅待機の対応を行っているケースが見られます。今回はそうした場合の休業手当の取り扱いと計算について取り上げました。原則的な計算方法が適用できない例となりますので、まずは労働局にお問い合わせいただくと良いでしょう。

[関連法規]
労働基準法施行規則4条
 法第十二条第三項第一号から第四号までの期間が平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前三箇月以上にわたる場合又は雇入れの日に平均賃金を算定すべき事由の発生した場合の平均賃金は、都道府県労働局長の定めるところによる。

[関連通達]
労働基準法施行規則第4条による場合の平均賃金の算定基準(労働基準法第12条関係)(昭和22年9月13日 発基17号)
 施行規則第4条に規定する場合における平均賃金決定基準は次によること。
 施行規則第4条前段の場合は、法第12条第3項第一号乃至第三号の期間の最初の日を以て、平均賃金を算定すべき事由の発生した日とみなすこと。
 前項各号の期間中に当該事業場において、賃金水準の変動が行われた場合には、平均賃金を算定すべき事由の発生した日に、当該事業場において、同一業務に従事した労働者の一人平均の賃金額により、これを推算すること。
 雇い入れの日に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合には、当該労働者に対し一定額の賃金が予め定められている場合には、その額により推算し、しからざる場合にはその日に、当該事業場において、同一の業務に従事した労働者の一人平均の賃金額により推算すること。

新規学卒採用内定者の就労始期を繰り下げ自宅待機とした場合の平均賃金の算定(労働基準法第12条関係)(昭和50年3月24日 労働省労働基準局監督課長、賃金福祉部企画課長連名内翰)
 新規学卒者のいわゆる採用内定については、遅くも、企業が採用内定通知を発し、学生から入社誓約書又はこれに類するものを受領した時点において、過去の慣行上、定期採用の新規学卒者の入社時期が一定の時期に固定していない場合等の例外的場合を除いて、一般には、当該企業の例年の入社時期(4月1日である場合が多いであろう。)を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合が多いこと。したがって、そのような場合において、企業の都合によって就労の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、労働基準法第26条に定める休業手当を支給すべきものと解される。
 この場合における平均賃金は、自宅待機の開始日が労働基準法施行規則第4条の「雇い入れの日」に該当するものと解されるので、同条の規定に基づき都道府県労働基準局長が定めること。この際、あらかじめ賃金額が明確に定められている者については当該賃金額により、その他の者については自宅待機が採用内定者の一部に対して実施された場合には自宅待機とならなかった者の賃金額、自宅待機が採用内定者の全員に対して実施された場合には労働契約の成立時に参考的に示された賃金の額等により推算すること(昭和22年9月13日付け発基第17号参照)。


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2020年3月30日「休業手当・平均賃金の計算方法を教えてください」
https://roumu.com/archives/101546.html

(大津章敬)