労政審分科会で示された男性の育児休業取得促進の具体的方向性

 男性の育児休業取得促進が大きなテーマとなってきていますが、先日行われた第35回労働政策審議会雇用環境・均等分科会の中で、「男性の育児休業取得促進策等について(案)」が示されました。今後、労働政策審議会の諮問答申などを経て、法案が作成され、2021年通常国会で審議されることになると思われます。

 今回の資料における男性の育児休業取得促進策の重要ポイントを抜粋してご紹介しましょう。
(1)子の出生直後の休業の取得を促進する枠組み
○制度の必要性
・柔軟で利用しやすい制度として、実際に男性の取得ニーズの高い子の出生直後の時期について、現行の育児休業よりも柔軟で取得しやすい新たな仕組みを設けることが適当である。
・対象として主に男性が念頭に置かれる仕組みは、特に男性の取得が進んでない現状を踏まえ、ポジティブ・アクションの考え方等に沿ったものとして、設けることが適当である。
・なお、現行の育児休業と同様、労働者の申出により取得できる権利とすることが適当である。
○対象期間、取得可能日数等
・対象期間については、現在育児休業をしている男性の半数近くが子の出生後8週以内に取得していること、出産した女性労働者の産後休業が産後8週であることを踏まえ、子の出生後8週とすることが適当である。
・取得可能日数については、年次有給休暇が年間最長20労働日であること等を参考に、4週間とすることが適当である。
○各種手続き等
・現行の育児休業より短縮し、原則2週間前までとすることが適当である。
・分割して2回取得可能とすることが適当である。
・出生後8週間以内は、女性の産後休業期間中であり、労働者本人以外にも育児をすることができる者が存在する場合もあるため、労働者の意に反したものとならないことを担保した上で、労働者の意向を踏まえて、事業主の必要に応じ、事前に調整した上で、就労を認めることが適当である。
(2)妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対する個別の働きかけ及び環境整備
○制度の必要性
・職場の雰囲気や制度の不知等を理由として育児休業の申出をしないことを防ぐため、育児休業が取りやすい職場環境の整備、子が生まれる労働者に対する個別の働きかけを行うことが適当である。
○休業を取得しやすい職場環境の整備のあり方
・新制度及び現行の育児休業を取得しやすい職場環境の整備の措置を事業主に義務付けることが適当である。職場環境の整備の具体的な内容としては、中小企業にも配慮し、研修、相談窓口設置、制度や取得事例の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択することとすることが適当である。
○労働者への個別の働きかけ
・本人又は配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に周知し、取得の働きかけを事業主に義務付けることが適当である。具体的には、労働者又は配偶者が妊娠又は出産した旨の申出をしたときに、当該労働者に対し新制度及び現行の育児休業制度等を周知するための措置と、これらの制度の取得意向を確認するために必要な措置を義務づけることが適当である。
・個別労働者への周知の方法としては、中小企業にも配慮し、面談での制度説明、書面等による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択することとすることが適当である。なお、取得意向の確認については、育児休業の取得を控えさせるような形での周知及び意向確認を認めないこと、また、事業主から意向確認のための働きかけを行えばよいことを、指針において示すことが適当である。
・本人又は配偶者の妊娠・出産の申出をしたことを理由とする不利益取り扱いを禁止することが適当である。
(3)育児休業の分割取得等
○制度の必要性
・出生直後の時期に限らず、その後も継続して夫婦でともに育児を担うためには、夫婦交代で育児休業を取得しやすくする等の観点から、現行の育児休業についても分割を可能とすることが適当である。
○分割の回数
・分割して2回取得可能とすることが適当である。
○1歳以降の延長の場合の取扱
・延長した場合の育児休業の開始日が、各期間(1歳~1歳半、1歳半~2歳)の初日に限定されているため、現行制度では各期間の開始時点でしか夫婦交代ができないが、開始日を柔軟化することで、各期間途中でも夫婦交代を可能(途中から取得可能)とすることが適当である。
(4)育児休業取得率の公表の促進等
・これに加え、大企業に育児休業等の取得率又は育児休業等及び育児目的休暇の取得率の公表を義務付けることが適当である。対象となる大企業の範囲については、少子化社会対策大綱等の閣議決定文を参考に、従業員 1001 人以上の企業を対象とすることが適当である。

 このようにかなり大規模な改正が予定されています。男性の育児休業取得に関しては、若手従業員を中心にその意向が強まっており、こうした法改正も後押しし、多くの男性が育児休業を取得する時代になっていくのだと思われます。


関連記事
2020年12月15日「男性の育児休業の取得促進 来年(2021年)の通常国会にも改正法案提出へ」
https://roumu.com/archives/105418.html

参考リンク
厚生労働省「第35回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15728.html

(大津章敬)