厚労省から示された今後の高年齢者就業確保措置の実施に係る指導

 昨日の記事「今国会に再度提出された公務員の定年を65歳引き上げる改正法案」でも触れたとおり、2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。これに伴い、厚生労働省職業安定局長は「高年齢者雇用対策の推進について」(令和3年3月26日職発0326第10号)を発出し、高年齢者雇用対策の推進にかかる業務運営について各都道府県労働局長に通達しました

 その中でも、高年齢者就業確保措置の実施にかかる指導が、今後、どのように行われるかについて、関心が高いものと思われることから、以下で内容を確認します。

【第3高年齢者就業確保措置の実施に係る指導】
1.高年齢者の就業確保に関する指導等に関する方針
 就業確保措置は、令和2年改正により新たに設けられた努力義務であり、また、雇用確保措置とは異なる創業支援等措置を新たな選択肢として規定していることから、まずは制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発及び指導を行うこと。また、70歳までの就業確保措置の実施に向けた自主的かつ計画的な取組が促進されるよう定めた下記2の指針についても周知徹底を図ること。
 雇用時における業務の内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせるなど、令和2年改正の趣旨に反する措置を講ずる事業主に対しては、措置の改善等のための指導等を行うこと。
 労働局及び安定所における積極的な周知とあわせて、企業が賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において65歳超雇用推進プランナー等が専門的・技術的支援を有効に行えるよう、安定所は、適切な役割分担の下、都道府県支部と密接な連携を図ることとしており、こうした方針に基づき、就業確保措置に係る助言等を行うこととする。

2.高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針の基本的考え方
 法第10条の2第4項の規定に基づく「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」(令和2年厚生労働省告示第351号)は、65歳以上70歳未満の定年の定めをしている事業主等が、労使間で十分な協議を行いつつ、就業確保措置の適切かつ有効な実施を図るための指針であり、以下の内容を示している。
 70歳までの就業確保措置については努力義務であることから、事業主は、措置の対象となる高年齢者に係る基準を定めることも可能であるが、このような対象者基準の設定に当たっては、労使間で十分に協議の上、各企業の実情に応じて定められることを想定しており、その内容は原則として労使に委ねられるものであり、当該対象者基準を設ける際には、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。
 継続雇用制度を導入する場合、法第9条第2項に規定する特殊関係事業主又は令和2年改正後の法第10条の2第3項の規定に基づいて他の事業主(65歳以上の継続雇用制度を導入する場合に限る。以下同じ。)により雇用を確保しようとするときは、事業主は、その雇用する高年齢者を当該特殊関係事業主又は当該他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を、当該特殊関係事業主又は当該他の事業主との間で締結する必要があることに留意すること。なお、他の事業主において雇用される場合、労働契約法(平成19年法律第128号)に基づく無期転換ルールに係る特例を規定する専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(平成26年法律第137号)が適用されず、無期転換申込権が発生すること。
 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当する場合には、継続雇用しないことができること。就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできること。
ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意すること。
 創業支援等措置を導入する場合には、則第4条の5第1項に規定する創業支援等措置の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を作成し、過半数労働組合等の同意を得る必要があるが、その際に、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、実施計画に記載する事項を定めるものであること及び当該措置を選択する理由を十分に説明すること。また、創業支援等措置における個々の高年齢者の働き方について、業務の委託を行う事業主が指揮監督を行わず、業務依頼や業務従事の指示等に対する高年齢者の諾否の自由を拘束しない等、労働者性が認められるような働き方とならないよう留意すること。
 心身の故障のため業務に耐えられないと認められること、業務の状況が著しく不良で引き続き業務を果たし得ないこと等実施計画に定める契約解除事由又は契約を更新しない事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、契約を継続しないことができること。
 創業支援等措置のうち、令和2年改正後の法第10条の2第2項第2号ロ又はハの規定に基づく事業主が委託、出資等する者が行う社会貢献事業に係る措置を講じようとするときは、事業主は、社会貢献事業を実施する者との間で、当該者が当該措置の対象となる高年齢者に対して当該事業に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があることに留意すること。

 努力義務であるため、指導においても労使間での協議を重視するスタンスになっていますが、今後、周知・啓発活動はさらに進められることになります。自社の高齢者雇用について、検討が進んでいない企業は進めるようにしましょう。なお、通達の全文は参考リンクからご参照ください。


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2021年4月15日「今国会に再度提出された公務員の定年を65歳引き上げる改正法案」
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2020年11月2日「70歳までの就業確保 来年4月から努力義務へ」
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2020年11月1日「パンフレット:高年齢者雇用安定法改正の概要」
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2020年11月1日「パンフレット:改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されます」
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参考リンク
厚生労働省「「高年齢者雇用対策の推進について」(令和3年3月26日職発0326第10号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000761241.pdf
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html
(宮武貴美)