契約社員も育児休業や介護休業が取りやすくなります

 前回、出生時育児休業に関して説明した大熊であったが、先行して施行されるであろう有期契約労働者の育児休業・介護休業の取得要件について、服部印刷で説明する必要があるなと思っていた。


大熊社労士
 前回、男性版産休についてご説明しましたが、その前におそらく契約社員が育児休業や介護休業を取得しやすくなるという取扱いが施行(施行日:2022年4月1日)されますので、その話を今日はご説明しましょう。
福島さん
 大熊先生、契約社員の話ということですが、契約社員は今でも契約更新がされるのであれば、育児休業や介護休業を取ることができますよね?
大熊社労士
 確かに、契約社員、つまり有期契約労働者であるからということのみで、育児休業や介護休業を取得できないわけではありません。ただし、法令上、有期契約労働者の育児休業は、「引き続き雇用された期間が1年以上であること」と「1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと」という要件を満たした人が取れるということになっています。
宮田部長宮田部長
 あぁ、本当だ!育児・介護休業規程にそのように書いていますね。
福島さん
 そっかぁ、そうでしたね。
大熊社労士
 これについて、今回の法改正で「引き続き雇用された期間が1年以上であること」という要件が削除されました。つまり、入社1年未満の契約社員であっても育児休業が取得できることになりました。
服部社長服部社長
 まぁ、育児休業の取得促進という観点からは望ましいことなのですが、会社側としては、入社してすぐに長期の育児休業を取るというのは、気持ち的に困るというのも事実かもしれません。労務の提供をしてくれることを期待して採用をするわけなので、また人材を採用する必要が出てきますよね。
大熊社労士
 私も服部社長の感じることはよくわかります。実は、この入社1年未満の従業員については、現状でも労使協定を締結することで、育児休業の取得を拒むことができるとなっています。
宮田部長
 ん?わからなくなってしまいました。
大熊社労士
 法改正が絡むのでややこしくなっていますね。現状、正社員のように無期契約の従業員は、入社1年未満であっても育児休業を取得することができるのですが、労使協定を締結し「入社1年未満の従業員からの育児休業の申し出は拒むことができるものとする」とすることができるのです。
 そして、今回の法改正で有期契約労働者もこの労使協定の対象者として扱うことができるのです。
宮田部長
 なるほど。法律での育児休業の取得除外ではないものの、労使協定で取得除外できる、ということですね。
服部社長
 当社では確か労使協定を締結しているので、結果としては変わらないといえそうですね。
大熊社労士
 はい、当然ながら育児・介護休業規程は変更し、運用上の整理も必要ですが、入社1年未満の契約社員が育児休業を取得できないという点は、結果としては変わらないのでしょう。
福島照美福島さん
 ちなみに、「1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと」という要件はどうなるのでしょうか?
大熊社労士
 そちらについて説明していませんでしたが、要件は残っています。長期に雇用される中で、一定の期間、休業が取れるというのが育児休業ですからね。なお、ここまでは育児休業のことを中心にお話ししてきましたが、介護休業も同様の取り扱いになります。今回の改正育児・介護休業法では育児休業に注目が集まっていますので、介護休業も変更があることを押さえておきましょう。
宮田部長
 なるほど、確かにそうですね!
大熊社労士
 最後に育児休業給付金に関して補足しておきます。契約社員に対する育児休業給付は、現状、「引き続き雇用された期間が1年以上であること」と「1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと」という要件を満たした被保険者に支給されます。会社が法律を上回る措置として、「入社1年未満の契約社員も育児休業を取ってもいいよ」としたとしても、入社1年未満の有期契約労働者には育児休業給付金は支給されないことになっています。
福島さん
  そっかぁ、そうですね。
大熊社労士大熊社労士
 この育児休業給付金の対象となる従業員の要件の詳細は、雇用保険法施行規則で規定されているので、今後、育児・介護休業法の改正合わせて、要件が改正されるかと思います。育児休業給付金への影響は全く考えていませんでしたが、知り合いの社労士に聞いて今後注目していかねばと思いました。
宮田部長
 そうですね。産休・育休関連は一つの改正が多くの範囲に影響しますね。これからも細かいところもいろいろ教えてください。よろしくお願いします。

>>>to be continued
大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。今回の育児・介護休業法の改正では、就業規則(育児・介護休業規程)の他、労使協定の内容の変更を検討する必要がある部分もあります。細かな内容まで確認するようにしましょう。


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2021年6月14日「男性版産休(出生時育児休業)とはどういうものですか?」
https://roumu.com/archives/107923.html
参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
厚生労働省「第204回国会(令和3年常会)提出法律案」
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/204.html
(宮武貴美)