雇用保険料率の見直し等が盛り込まれた雇用保険法等改正案が国会に提出
コロナ禍で急激に財政状況が悪化した雇用保険の財政。その立て直しのために、来年度の雇用保険料率の見直しについて厚生労働省の労働政策審議会で審議されてきました。そして、雇用保険料率の見直し(実体的な引上げ)が盛り込まれた雇用保険法等の改正法案が国会に提出されました。今回は、職業安定法や職業能力開発促進法等も含まれた一括法案になっています。
各々の改正法案の概要は以下の通りとなります。
1.失業等給付に係る暫定措置の継続等【雇用保険法、雇用保険臨時特例法】
① 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、雇用機会が不足する地域における給付日数の延長、教育訓練支援給付金等の暫定措置を令和6年度まで継続するとともに、コロナ禍に対応した給付日数の延長の特例について、緊急事態措置の終了日の1年後までを対象とする等の見直しを行う。
② 基本手当の受給資格者が事業を開始した場合等に、当該事業の実施期間を失業等給付の受給期間に算入しない特例を設ける。
③ 雇用保険受給者が求職者支援制度に基づく訓練を受ける場合に、訓練延長給付等の対象とする。
2.求人メディア等のマッチング機能の質の向上【職業安定法】
① 新たな形態の求人メディア(ネット上の公表情報を収集する求人メディア等)について「募集情報等提供」の定義に含めるとともに、募集情報等提供事業者を、雇用情報の充実等に関し、ハローワーク等と相互に協力するよう努める主体として法的に位置づける。
② 募集情報等提供事業者に対し、募集情報等の正確性や最新性を保つための措置、個人情報保護、苦情処理体制の整備等を義務づけるとともに、現行の助言・指導に加え、改善命令等の指導監督を可能とする。
特に求職者情報を収集する募集情報等提供事業者は事前に届出を行うこととし、迅速な指導監督を可能とする。
3.地域のニーズに対応した職業訓練の推進等【職業能力開発促進法】
① 職業訓練に地域のニーズを適切に反映すること等により、効果的な人材育成につなげるため、関係者による都道府県単位の協議会の仕組みを設ける。
② キャリアコンサルティングの推進に係る事業主・国等の責務規定を整備する。
4.雇用保険料率の暫定措置及び雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等【雇用保険法、労働保険徴収法、特別会計法】
① 雇用保険の失業等給付に係る保険料率(原則0.8%)について、令和4年4月~9月は0.2%、10月~令和5年3月は0.6%とする。
② 求職者給付の国庫負担割合について、雇用保険財政や雇用情勢に応じて異なる国庫負担割合を適用するとともに、別途国庫から機動的に繰入れ可能な仕組みを導入する。また、育児休業給付等の国庫負担割合の引下げの暫定措置を令和6年度まで継続し、求職者支援制度の国庫負担割合の引下げの暫定措置は、当分の間、本則(1/2)の55/100とする。
③ コロナ禍への対応のための失業等給付等への国庫からの繰入れ及び雇用安定事業に係る国庫負担の特例の暫定措置を令和4年度まで継続する。
④ 育児休業給付費及び雇用安定事業費の財源について、積立金からの借入れを可能とする暫定措置を令和6年度まで継続するとともに、当該借入額について、返済の猶予等を可能とする。
雇用保険料率は年度の途中で変更になるというかなりイレギュラーな取扱いになる予定です。今後国会審議の状況も注目していくことにしましょう。
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2022年1月14日「2022年10月より雇用保険料率引上げの方向 雇用保険法等改正案の要綱」
https://roumu.com/archives/110196.html
参考リンク
厚生労働省「第208回国会(令和4年常会)提出法律案」
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/208.html
(宮武貴美)