【社保適用拡大④】被保険者の加入判断に用いる「8.8万円」に入る賃金・入らない賃金

 社会保険の適用拡大で被保険者となる従業員の要件の一つに、賃金の月額が8.8万円以上であることというのがあります。社会保険の適用拡大に関する連載4回目は、この被保険者となる判断に用いるときに対象となる賃金の考え方について整理しておきます。

 社会保険で標準報酬月額を決める賃金は、基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の賃金であり、非課税となる通勤手当も含んで決定がされます。これに対し、適用拡大で被保険者となる判断に用いる要件の一つである賃金月額は、基本給及び諸手当で判断することになっている一方で、以下の①から④までの賃金は算入しないことになっています。
①臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
②賞与等の1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
③時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して
支払われる賃金(割増賃金等)
④最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当
及び家族手当)

 ①や②については、標準報酬月額を決める際にも原則として含まない賃金であるため、わかりやすいですが③や④については、標準報酬月額を決める際には含む賃金であるため誤りやすくなっています

 この賃金月額の判断は、被保険者の要件として用いるものであり、被保険者として標準報酬月額を決める場合には、正社員等の被保険者と同じく、上記の③④の賃金も含んで考えることが留意点として挙げられます。


関連記事
2022年5月16日「【社保適用拡大③】被保険者となる週20時間以上の所定労働時間の基本的な判断」
https://roumu.com/archives/112054.html
2022年4月25日「【社保適用拡大②】確認しておきたい「1年以上の雇用が見込まれること」の要件廃止」
https://roumu.com/archives/111862.html
2022年4月18日「【社保適用拡大①】2022年10月から特定適用事業所となる事業所への通知」
https://roumu.com/archives/111767.html
参考リンク
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0410.pdf
日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html
(宮武貴美)