新しい資本主義実現会議が示した「人的資本等の非財務情報の株式市場への開示強化と指針整備」の概要

 先日から、2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の重要箇所について取り上げていますが、今回はその3回目。本日は話題の「人的資本等の非財務情報の株式市場への開示強化と指針整備」について取り上げます。

 このテーマに関しては以下のような記述が見られます。

  • 「費用としての人件費から、資産としての人的投資」への変革を進め、新しい資本主義が目指す成長と分配の好循環を生み出すためには、人的資本をはじめとする非財務情報を見える化し、株主との意思疎通を強化していくことが必要である。
  • 米国市場の企業価値評価においては、無形資産(人的資本や知的財産資本の量や質、ビジネスモデル、将来の競争力に対する期待等)に対する評価が大宗を占める。これに対し、日本市場では、依然として有形資産に対する評価の比率が高く、企業から株式市場に対して、人的資本など非財務情報を見える化する意義が大きい。
  • 本年内に、金融商品取引法上の有価証券報告書において、人材育成方針や社内環境整備方針、これらを表現する指標や目標の記載を求める等、非財務情報の開示強化を進める。
  • 他方で、日本の上場企業のCFOに対するアンケート調査によると、サステナビリティ情報開示に向けた課題として、「モニタリングすべき関連指標の選定と目標設定」、「企業価値向上との関連付け」、「必要な非財務情報の収集プロセスやシステムの整備」と回答した企業が多い。このため、企業側が、モニタリングすべき関連指標の選定と目標設定、企業価値向上との関連付け等について具体的にどのように開示を進めていったらよいのか、参考となる人的資本可視化指針を本年夏に公表する。
  • また、今後、資本市場のみならず、労働市場に対しても、人的資本に関する企業の取組について見える化を促進することを検討する。
  • 人的資本以外の非財務情報についてもその開示は重要であるので、価値協創ガイダンス等の活用を企業に推奨していく。

 人的資本等の非財務情報の開示は来年度に向けての大きなテーマとなっていくことが予想されます。既に積極的に開示を行っている企業を出て来ていますが、これが単なる形式的な対応に終始することなく、日本企業の人的資本の強化、競争力の向上に繋がることを期待したいところです。


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参考リンク
内閣官房「新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html
閣議決定(R4.6.7)「新しい資本主義実現会議「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai8/shiryou1.pdf

(大津章敬)