つながらない権利に対する配慮が必要という回答が74.9%
誰もがスマホを持ち、通話だけでなく、メールやチャットなどでいつでも連絡がつく時代になりました。昔は駅での待ち合わせで連絡がつかず、結局会えなかったなどの経験をされた方も多いと思いますが、現在では事前に明確な約束をせず、当日、LINEなどでやり取りをしながら予定を調整するといったことも多くなっています。非常に便利な時代になりましたが、これは同時に、いつでも連絡が入り、対応を迫られるということにも繋がります。
そのため近年、つながらない権利(droit à la déconnexion)という概念が注目されています。わが国では青山学院大学の細川良教授がこのテーマでよくテレビなどでコメントされていますが、biglobeが先日公表した「2023年の働き方に関する意識調査」の中でこのテーマが取り上げられています。
これによれば、「つながらない権利」に対する配慮が必要だと思うかという設問に対する回答は以下のようになっています。
思う 39.9%
やや思う 35.0%
あまり思わない 17.0%
思わない 7.2%
このように、つながらない権利に対する配慮が必要という回答(思う+やや思う)が74.9%にも上っています。2020年12月25日に厚生労働省から公表された「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」においても、つながらない権利については以下の記載が見られ、その有効性が述べられています。
- フランスでは、労使交渉において、いわゆる「つながらない権利」を労働者が行使する方法を交渉することとする立法が2016年になされ、「つながらない権利」を定める協定の締結が進んでいる。テレワークは働く時間や場所を有効に活用でき、育児等がしやすい利点がある反面、生活と仕事の時間の区別が難しいという特性がある。このため、労働者が「この時間はつながらない」と希望し、企業もそのような希望を尊重しつつ、時間外・休日・深夜の業務連絡の在り方について労使で話し合い、使用者はメールを送付する時間等について一定のルールを設けることも有効である。
- 例えば、始業と終業の時間を明示することで、連絡しない時間を作ることや、時間外の業務連絡に対する返信は次の日でよいとする等の手法をとることがありうる。労使で話し合い、使用者は過度な長時間労働にならないよう仕事と生活の調和を図りながら、仕事の場と私生活の場が混在していることを前提とした仕組みを構築することが必要である。
コロナの感染拡大によるリモートワークの増加や各種チャットツールの普及は、より仕事とプライベートの線引きを曖昧にし、それがメンタルヘルス不調などの原因にもなっています。つながらない権利が法制化されることは短期的にはないと思われますが、各社独自の対応として検討してみることは重要ではないでしょうか。
関連記事
2021年1月2日「厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書における労働時間管理のポイント」
https://roumu.com/archives/105632.html
参考リンク
biglobe「2023年の働き方に関する意識調査」
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2023/01/230118-1
厚生労働省「「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15768.html
(大津章敬)