労働政策審議会労働条件分科会におけるホワイトカラーエグゼンプション制度検討の視点

 1月に「今後の労働時間制度に関する研究会」(座長:諏訪康雄法政大学大学院政策科学研究科教授)の最終報告書が公表され、それに基づいて厚生労働省では労働政策審議会労働条件分科会において、今後の労働時間制度の在り方について検討を進めています。先日、これに関し「労働契約法制及び労働時間法制に係る検討の視点」という資料が発表になりました。本日はこの中から注目されているホワイトカラーエグゼンプション制度(自律的労働時間制度)の創設に関する部分を見てみることにしましょう。(以下、資料からの引用)



■基本的な考え方
 産業構造が変化し就業形態・就業意識の多様化が進む中、高付加価値の仕事を通じたより一層の自己実現や能力発揮を望み、緩やかな管理の下で自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者について、一層の能力発揮をできるようにする観点から、現行の労働時間制度の見直しを行う。
■対象労働者の要件等
○自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者は、次のような者ではないか。
*使用者から具体的な労働時間の配分の指示がされないこと、及び業務量の適正化の観点から、使用者から業務の追加の指示があった場合は既存の業務との調節(例えば、労働者が追加の業務指示について一定範囲で拒絶できるようにすること、労使で業務量を計画的に調整する仕組みを設けていること)ができるようになっていること。
*労働者の健康が確保されるという視点が重要であり、以下の要件が満たされていること。
週休2日相当の休日、一定日数以上の連続する特別休暇があることなど、相当程度の休日が確保されることが確実に見込まれること。
健康確保のために健康をチェックし、問題があった場合には対処する仕組み(例えば、労働者の申出により、又は定期的に医師による面接指導を行うこと)が整っていること。
*年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、自律的に働き方を決定できると評価されるに足る一定水準以上の額であること。
○上記の事項について、対象労働者と個別の労働契約で書面により合意していることが必要ではないか。
○ネガティブリストとして、物の製造の業務に従事する者等を指定して、この制度の対象とはならないことを明確にすることが必要ではないか。
■導入要件等
○労使の実質的な協議に基づく合意により、新制度の対象労働者の範囲を具体的に定めることとするのが適当ではないか。また、年収が特に高い労働者については、協議を経ずに対象労働者とすることができるようにすることが考えられないか。
○対象労働者の範囲を労使合意で具体的に明確にする際には、当該事業場の全労働者の一定割合以内とすることが必要ではないか。
○就業規則において、適用される賃金制度が他の労働者と明確に区分されており、賃金台帳に個別に明示されていることが必要ではないか。
■効果
○労働基準法第35条(法定休日)及び第39条(年次有給休暇)は適用し、その他の労働時間、休憩及び休日に関する規定並びに深夜業の割増賃金に関する規定を適用しないこととしてはどうか。
■適正な運用を確保するための措置等
○適正な運用を確保するため、次のような措置等を講ずることとしてはどうか。
*苦情処理制度を設けることを義務付けること。*重大な違背があった場合は、労働者の年収に一定の割合を乗じた補償金を対象労働者に支払うものとすること。
*要件違背の場合、行政官庁は、改善命令を発することができること。改善命令に違背した場合は、当該対象労働者を通常の労働時間管理に戻す命令や制度(全体)の廃止命令を発出することができるものとすること。
○要件違背の場合に、労働基準法第32条違反等と整理するとともに、別途自律的労働時間制度の手続違反として厳正な履行の確保を図ることが考えられないか。


 このように基本的には研究会の最終報告書を踏襲したものになっており、まだあまり目新しい情報は出てきていません。現時点では、制度導入に向けた具体的な検討が始まったと理解するのが良さそうです。今後の動向に注目しましょう。



関連blog記事
□「今後の労働時間制度に関する研究会」最終報告書公表(2006年1月28日)
https://roumu.com
/archives/50363597.html


(大津章敬)


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