労働契約法の議論における有期労働契約に関するポイント

 先週金曜日の当blogでご紹介した労働政策審議会の「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」を読み込んでみましたが、読めば読むほど、実務に非常に大きな影響を与える事項が検討されていることが分かります。今回は労働時間法制に関する部分が大きく取り上げられていますが、労働契約法に関しても非常に具体的な議論がなされています。そこで本日はその中から、「有期労働契約をめぐるルールの明確化」に関し、私が重要と判断したポイントをご紹介します。(該当箇所は資料の7ページ以降となります。)
労働契約の締結に関し、使用者は有期契約とする理由を示すとともに、その契約期間を適切なものとするよう努めなければならないものとする。
有期労働契約においては、使用者は、契約期間中はやむを得ない理由がない限り解約できないものとする。
有期労働契約が更新されながら一定期間(例えば、1年)または一定回数(例えば、3回程度)を超えて継続している場合において、労働者の請求があったときには、使用者は期間の定めのない契約の優先的な応募機会の付与を行なわなければならないこととすることについて、検討する。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」において、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に限り求められている雇止めの予告について、一定回数(例えば、3回程度)以上更新されている者についても対象とすることについて、引き続き検討する。
は省略)


 実務的にこの内容を見ると、今後、有期労働契約を締結するのは(現在の夏休みの学生アルバイトのように)初めから短期での雇用が明確な場合に限定され、世間で一般的に行なわれている1年契約に基づく契約社員制度は維持できないのではないかと思われます。雇止めのトラブルの増加や同一価値労働同一賃金の流れからすれば、当然このような結論になるでしょうが、企業経営の観点から見れば、現在の有期労働契約者の多くが移行するであろう定型的職務を主として担当する正社員層の賃金水準を抑制に繋がり、結果的には正社員間の処遇格差が拡大することになるのではないでしょうか。以前より、将来的には正社員は成果を中心として評価されるコア社員が年俸制(ホワイトカラーエグゼンプション制度)へ、その他の多くの労働時間に基づいて働く一般社員は時給へと二極化が進むだろうとお話していますが、その時期が徐々に近付いて来ているように感じてなりません。



参考リンク
労働政策審議会「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-5a2.pdf


(大津章敬)


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