社員のプロフェッショナル化とその組織への影響

 「プロフェッショナル」と聞くと、専門性が高く、特別な人だけが当てはまるようなイメージがありますが、社員の専門性志向が高まりにより、人材のプロフェッショナル化が進行しつつあります。その背景には、多くの大企業の破綻とそこでの再就職の難しさをマスコミなどを通じて目の当たりにした経験から、会社だけで通用する能力ではなく他の会社でも通用する能力(エンプロイアビリティ=雇用される能力)を身につけようとする動きが強まっていることが指摘されるでしょう。


 このような動きがある中で、企業においては社員が希望しない仕事には就きたくないと異動を拒んだり、部下をもつことよりも専門性を高めたいと昇進を辞退するといった「人事異動」に関するトラブルが頻発しています。本来人事異動は組織の活性化や社員の適正配置・能力向上を目的として行われるものですが、それが結果として社員のモチベーションが下げてしまうことも少なくありません。この問題を考えるにあたっては、会社は社員に対して何を期待しているのかについてメッセージを伝え、会社の方向性と社員本人のキャリアプランをすり合わせてみることが重要です。人事異動に際してこの手続きを踏んでいるかどうかが、社員本人の動機づけにも大きな影響を与えることとなります。


 社員のプロフェッショナル化に関するもうひとつの問題が、そのキャリア支援です。プロフェッショナルは前回お話したように準拠集団を「所属している会社」ではなく、外部に持つ傾向が強く見られます。そのため、そのキャリア形成においては、外部に対して積極的に係わることを会社として応援していくことが欠かせないでしょう。また、プロフェッショナル志向の高い社員は「会社」で働くことよりも、仕事に専念できる「環境」や「仕事そのもの」に重きを置いています。そのため会社として、どのような仕事環境をつくっていくかという視点を加えて考えていく必要があるでしょう。次回は「エンプロイメンタビリティ」についてお話したいと思います。お楽しみに。



関連blog記事
2007年2月11日「社員の成長と準拠集団」
https://roumu.com
/archives/50881741.html


(福間みゆき)


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