CS(顧客満足度)の前にES(従業員満足度)

 2007年2月5日の日経新聞「スイッチオン・マンデー」のテーマに、従業員満足度が取り上げられていました。同記事はさまざまな企業の従業員満足度(ES)調査を紹介し、「職場環境などに対する社員の意識調査を実施する企業が増えている。意思疎通の悪化など成果主義のマイナス面を修正し、顧客満足度(CS)の改善にもつなげる狙いだ」とまとめています。


 近年、成果主義に基づく人事制度が導入される例が目立っています。成果主義導入には様々な批判もありますが、年々その導入事例も増加しており、結果的にはほとんどの企業がこの流れの中にあると言っても過言ではないと思います。しかし、同記事が指摘するように成果主義導入は、企業の本来なすべき顧客満足度(CS)に影響を及ぼしかねません。そのことに気がついた企業が、相次いで積極的にコンサルタント会社にES調査を依頼しているのだと思います。ES調査では、職場環境や社内制度等について社員の満足度を調査します。同記事には多数の事例や統計が紹介されています。その一部を要約してご紹介しましょう。



■花王の例
 「経営トップは折に触れて戦略を自らの言葉で語っているか」等の100項目余りの質問を調査しています。この調査により「経営陣の考え方は現場に伝わっていない」と評価されたため、社長が直接に若手社員の代表者に経営戦略を説く懇談会が設けられました。
■社会経済生産本部が05~06年に上場企業対象に実施した調査結果
 回答した上場企業の成果主義導入率は約9割。業績や成績で賃金・賞与に相当の格差がついていると見られますが、「現場の評価者は適正が評価ができているか否か」の質問に対しては、「どちらかといえばできている」という回答が約5割に留まってしまっています。
■村田製作所の例
 ES調査の結果、「組織が硬直している」との指摘を受けました。成果主義の弊害として、「部下を育てない上司、隣で仕事をする 同僚を助けない社員が目に付くなど社内に個人主義が広がり始めた」として、課長以上の賞与を決める仕組みを改革しました。


以上、日経新聞2007年2月5日「スイッチオン・マンデー」要約



 非常に興味深い内容です。確かに成果主義の導入は企業の利益を増幅させる効果を持つ一方で、自己中心的となり、本来日本的経営で美徳とされてきた精神が欠けてしまうという弊害も生じてしまいがちです。成果主義そのものは、今の経営の仕組みの中では避けては通れない流れになっていますが、一方で、その成果主義を前提として、如何に顧客満足度を高めるのかということにも、経営者は目を配らなければなりません。そして、顧客満足度の向上には、社員が満足として生き生きと仕事ができる職場環境が不可欠です。


 私もかねてより、「やる気阻害要因の除去」を唱えていますが、今一度、自らの中でやる気を阻害している要因とは何かを客観的にあぶり出し、そしてその阻害要因を潰していくことが必要だと、記事を読みながら再確認しました。



関連blog記事
2007年2月27日「導入事例が急増する社員意識調査」
https://roumu.com
/archives/50901505.html


(佐藤澄男)


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