[平成19年健康保険改正]標準賞与額の上限額改正に伴う賞与支給時の健康保険料に関する注意点

 健康保険の標準報酬月額の上下限拡大は以前から数度に渡り、当ブログで取り上げてきました。今回は、同じく今年度の健康保険法改正の中から、標準賞与額の改正について取り上げます。


 平成19年4月以降、賞与支給時の健康保険料の取り扱いが改正されています。具体的には賞与支給毎に定められていた標準賞与額の上限が年間(4月1日~3月31日の年度で判断)の賞与累計額に変更された上で、その金額も年間540万円に引き上げられました。これにより賞与の支給回数を年1回に変更し、上限額を利用することで保険料の節減を行っていた企業では、この仕組みが通用しなくなってしまいましたが、実務上はこの問題だけに止まりません。特に問題になるのが転職者の取扱いでしょう。年度の途中で資格の喪失・取得があった場合でも、同一の保険者に対し支給された賞与は標準賞与額を累計して、上限の判断を行うことになります。


 この取り扱いを行う際には実務面で、以下の2点を注意する必要があります。
転職者から控除する賞与の健康保険料
 転職者に賞与を支給する場合、従前勤務していた事業所で支給された賞与額が、当社で支払う賞与にかかる保険料に影響を与えることとなります。例えば従前の事業所で300万円の賞与を受給し、その後、自社で300万円の賞与を受給した場合、同一保険者である期間に支払われた賞与については標準賞与額を累計することとなりますので、自社での標準賞与額は240万円で決定され、賞与保険料の対象となります。なおこのように上限金額を超える賞与が支給される場合でも、賞与支払届は支給額(今回の例であれば300万円)で届出を行います。


賞与支払届への記載における注意点
 資格喪失日の属する月に資格喪失前に支払われた賞与については、保険料が不要となります。しかし、標準賞与額の累計には含まれるため、賞与支払届への記載が必要となります。


 これまで賞与支給時の健康保険料徴収については、単純に賞与を支払う際、その賞与について上限の確認を行えば足りましたが、今回の改正では過去の支給額まで確認しなければならなくなりましたので、注意が必要です。なお厚生年金保険については、改正前と同様の取扱いですので、健康保険と混同しないようにこちらもあわせて注意が必要です。



関連blog記事
2006年10月4日「健康保険法改正その6「標準賞与額の上限変更」」
https://roumu.com
/archives/50747124.html


参考リンク
愛知社会保険事務局「社会保険あいち3月号」
http://www.sia.go.jp/~aichi/kouhousi/s1903.pdf
社会保険庁「医療保険制度が改正されました」
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1004.html#19year


(宮武貴美)


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