平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント2 均衡のとれた待遇の確保の促進

均衡のとれた待遇の確保の促進 先週の金曜日のblog記事(2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」)は本当に多くのみなさんのアクセスを頂きました。ありがとうございます。本日はこの改正パートタイム労働法連載の第2回目をお送りします。改正パートタイム労働法のポイントとしては以下の4点がありますが、今回はこのうちの「均衡のとれた待遇の確保の促進」について取り上げたいと思います。
労働条件の文書交付・説明義務
均衡のとれた待遇の確保の促進(働き・貢献に見合った公正な待遇の決定ルールの整備)
通常の労働者への転換の推進
苦情処理・紛争解決援助


 「均衡のとれた待遇の確保の促進」は、「短時間労働者の基幹化を背景として、通常の労働者と同じ仕事を行っているにもかかわらず、その働きに見合った待遇がなされない等の不満が高まっている」、「働きに見合った公正な待遇の決定ルールを作り、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図ることが必要」といった現状の課題をあげ、パート労働者の待遇を正社員との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じるよう規定されています。具体的には、職務、人材活用の仕組み、契約期間の3つの要件が正社員と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いを表(画像はクリックして拡大)のようにそれぞれ規定しています。


 この中でも特に注目すべき内容は、[1]の通常の労働者と同視すべきパート労働者について、パート労働者であることを理由による差別的に取り扱いが禁止されていることでしょう。他のパート労働者についての項目が実施義務・配慮義務・努力義務であることと比較して厳格な取り扱いが求められていることが分かります。


 この改正に伴い、正社員と同一の労働を行っている、パートタイム労働者については、その待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。これにより月例賃金はもちろんのこと、賞与や退職金についても支給を行う方向で検討をする必要が出てくるでしょう。実務的にはパートタイマーの雇用管理や職務設計の見直しを行うと共に、正社員と共通の資格制度などの導入も検討する必要が出てくるでしょう。この改正は企業の人事労務管理に大きな影響を与えることは必至です。




[参考条文]
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第8条(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)
 事業主は、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。
2 前項の期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。


短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第9条(賃金)
 事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第2項及び第11条において同じ。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。次項において同じ。)を決定するように努めるものとする。
2 事業主は、前項の規定にかかわらず、職務内容同一短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第一項において同じ。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主に雇用される期間のうちの少なくとも一定の期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、当該変更が行われる期間においては、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるものとする。


短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第10条(教育訓練)
 事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間労働者が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間労働者に対しても、これを実施しなければならない。
2 事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、当該短時間労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする。


短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律  第11条(福利厚生施設)
 事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。



関連blog記事
2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」
https://roumu.com
/archives/51061223.html


参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)の概要」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1a.html
厚生労働省「パートタイム労働法が変わります(改正パートタイム労働法 広報用リーフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1b.html
厚生労働省「雇用均等・両立支援・パート労働情報」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/index.html


(宮武貴美)


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