通勤災害の保険給付における「日常生活上必要な行為」の範囲拡大

通勤災害の保険給付における「日常生活上必要な行為」の範囲拡大 先日、労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令(画像はクリックして拡大)が公布されました。今日はこの内容を確認しておきましょう。


 労働者災害補償保険法で認められている通勤とは、「就業に関し、住居と就業の場所との間の往復、就業の場所から他の就業の場所への移動、単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行なうことをいい、業務の性質を有するものを除くもの」とされています。さらに「往復又は移動の経路を逸脱し、又は中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の往復又は移動は通勤とならない」としつつも「逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行なうための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き通勤となる」としています。


 今回の改正では、後段にある「日常生活上必要な行為」の範囲に新たに「要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)」が追加されました。進む高齢化社会に労災保険が対象となる範囲も対応してきていることがよく分かります。


[参照条文]
労働者災害補償保険法 第7条
 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
三 二次健康診断等給付
2 前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)
3 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。


労働者災害補償保険法施行規則 第8条(日常生活上必要な行為)
 法第七条第三項 の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。
一 日用品の購入その他これに準ずる行為
二 職業訓練、学校教育法第一条 に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
三 選挙権の行使その他これに準ずる行為
四 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
五 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)



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2007年11月26日「複数就業者の事業場間移動中の通勤災害」
https://roumu.com
/archives/51175059.html


(宮武貴美)


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