「名ばかり管理職」問題のその後

 平成20年5月20日、大手ハンバーガーチェーン会社が店長にも残業手当を支払うと発表した。今年1月の東京地裁判決が影響したことは言うまでもないが、この事件を機に多店舗展開している流通業の店長を中心に、「偽装管理職」と目される人々が訴えを起こし始めた。労働局もこの流れを重く見て通達を出し、全国規模で指導を開始している。


 喫緊の課題として多くの企業で管理監督者問題が検討されていると思うが、これは単純に残業手当を出せば解決するという問題でない。労働基準法でいう管理監督者の手前のリーダー達の賃金は通常は時間管理対象従業員の中では最高位になっている。そしておそらく彼らは現場レベルでは一番の稼ぎ頭であり、もっとも労働時間が長いメンバーであろう。故に彼らの残業単価はかなり高い。私自身も人事労務コンサルタントとして数社でこの課題を検討している最中であるが、まともにやると残業手当が膨らみ、部長クラスを飛び越えて役員の年収を超えてしまうケースまで出た。更には、残業単価の算出方法や時間のカウント方法が杜撰であったりするととんでもない数字が出てくる。この報酬の歪(いびつ)や逆転を解消するのはなかなか難しく、多少の給与制度の手直し程度では到底おぼつかない。畢竟、複数の方面から手を打つことになる。


 まずは、残業自体の削減、次は逆転現象を緩和・解消する賃金制度の改定であるが、どちらも難題になる。残業削減は急に出来ることではなく、組織風土や仕事のしくみ、つまり経営のあり方そのものに起因するため、数年のスパンでの改善が必要になる。単にノー残業デイを設けたり労働時間制限対策をするだけでは、かえって問題を潜在化させたり、サービス(不払い)残業問題を促進することが多い。また賃金制度の改定も、役職手当の見直し(削減)はもとより、残業の基礎となる賃金(特に基本給)制度の抜本的な見直しと不利益変更法理の対策、管理職層と非管理職との賞与の階差拡大、まったく異なる賃金体系として年俸制の設定、そしてそれらが影響を及ぼす退職金問題、時間効率や生産性に適合させた原資配分プラン等々、これらもすぐには実現できない課題が山積である。さらに問題は実質的にマネジメントをしていない、といって高度の専門職でもない「管理職待遇」の人々である。このクラスは通常は「管理監督者」にはあてはまらない。しかし賃金水準が相当高く、ここへも残業手当を支払うとなると、もう賃金管理は破綻する。これを解決する切り札が「ホワイトカラー・エクゼンプション」であったが、これは鳴りを潜めてしまっている。しかし、時代の流れは、確実に働き方そのものの改革を求めてきているようだ。



関連blog記事
2008年2月8日「大手ハンバーガーチェーン店長の残業手当支払判決が与える影響」
https://roumu.com
/archives/51248516.html

2007年12月7日「対応が遅れる労働時間の適正な把握と懸念される調査の増加」
https://roumu.com
/archives/51186435.html

2007年10月31日「明日から賃金不払残業解消キャンペーンがスタート~今年は過重労働解消も目的に追加」
https://roumu.com
/archives/51143376.html

2007年10月7日「平成18年度のサービス残業是正支払額は1,679社で227億円」
https://roumu.com
/archives/51113831.html


参考リンク
日本マクドナルド「新報酬制度の導入、及び労務管理体制の整備に関するお知らせ」
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2008/release-080520.html


(小山邦彦)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。