総合職・一般職などコース別雇用管理をする上での留意点

 近年、企業の再編や人事制度改革に伴い、総合職や一般職、もしくは地域限定職などのコース別雇用管理を見直す企業が増加しています。この点については、平成19年4月の男女雇用機会均等法改正の際に、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」という通達が出されていますので、本日はその内容を確認してみましょう。


 コース別雇用管理とは、職種等に基づいて複数のコースを設定し、コースごとに異なる配置や昇進、教育訓練等を行う雇用管理を行うことを言いますが、現実には男性は総合職、ほとんどの女性は一般職という実態があったり、一般職から総合職への転換実績が少ないことがあったりという状況が見られています。また、総合職についてはその必要性が十分に検討されないまま、女性が事実上満たしにくい全国転勤を要件とされることもあり、事実上の女性に対する差別的取り扱いとなっているようなことも少なくなく、その対応が課題となっています。そのため平成19年の男女雇用機会均等法の改正では、従来からの募集・採用、配置、昇進の取扱いに加え、職種の変更についても新たに差別的取扱いが禁止されました。さらに、総合職の募集・採用の転勤要件についても、合理的な理由がなければ間接差別にあたり違法としています。


 このような背景のあるコース別雇用管理ですが、男女雇用機会均等法および通達に対応するための留意事項が3点ありますので、押さえておきましょう。
均等法に違反しないために留意すべき事項
(1)コース等の変更に当たって、その対象者から男女いずれかを排除すること(例えば、「総合職」から「一般職」への職種変更を、
制度上は男女双方とするが、男性については職種変更を認めないという運用と行うこと)
(2)「総合職」の募集・採用に当たって、合理的な理由なく転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること(例えば、
広域にわたって展開する支店等がなかったり計画がない場合に転勤要件を設けること)


コース等で区分した雇用管理が実質的な男女別の雇用管理とならず、適正かつ円滑に行われるようにするために留意すべき事項
(1)コース区分に関する基準については、女性または男性が事実上満たしにくいものについて、その必要性等を十分検討すること
 合理性のない基準は、裁判において間接差別をされる可能性があり、そのような場合は基準の必要性・合理性を改めて検討することが必要
(2)あるコースにつき、そのほとんどが男女労働者のいずれかで構成されているような場合に、経営合理化等に伴いそのコースを廃止等するには、結果的に男女労働者のいずれかのみに解雇等不利益な効果が生ずることがないよう、十分な配慮が必要
(3)新たに「募集、採用時に転居転勤要件を設けるに当たって留意すべき事項」を追加
 募集・採用に当たって、当該転勤の期間、場所、頻度、実績等の情報提供を行うことが望まれる。


均等法等に照らし男女労働者の能力発揮のために行うことが望ましい事項
(1)労働者の意欲、能力、適性等に応じ総合職への転換を積極的に進めること等によって、その経験、能力を十分に評価した処遇が行われるように配慮するなど、労働者の就業意欲を失わせず、適正な処遇を維持すること
(2)コース等で区分した雇用管理を導入、変更または廃止する際に既存の労働者をコース等の区分に分けるに当たっては、従来の職種のみにとらわれることなく、その時点での労働者の能力を再度評価し、その意思を確認した上で行うこと
(3)出産や育児、介護等働き方に大きな影響を与える局面に対して、より柔軟な対応ができるように転換制度を設けたり、適度な時点で労働者が自らコースの区分を見直しすることができるような制度を整備すること


 コース等で区分した雇用管理を行う場合においては、改正均等法に則した雇用管理を行っていく必要があります。会社としては、どのようなコース等の区分を選択した者であっても、その者の能力を十分に発揮できる環境を創っていくことが求められています。



関連blog記事
2008年6月25日「女性管理職を有する企業の割合が66.6%に増加」
https://roumu.com
/archives/51357629.html


参考リンク
「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」による啓発指導について(雇児発第0122001号 平成19年1月22日)
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/josei/hourei/dl/20011010-01.pdf


(福間みゆき)


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