[ワンポイント講座]退職者の個人情報はいつまで保管すればよいのでしょうか

 今日は「人事労務ワンポイント講座」の水曜日です。今回は退職者の個人情報の取り扱いについて、お話しましょう。



 退職となった社員の履歴書や人事評価表などの資料について、いつまで保管されていますでしょうか。担当者が替わってもずっと保管し続けており、現担当者ではいつ頃の資料なのか分からないということも少なくないように思います。


 まず労働基準法の規定を見てみると、第109条において、「使用者は、労働者の名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」と定められています。そのため、退職者の個人情報についても、法令上3年間保存しておくことが必要になっています。このように最低限の保管期間はあくまで3年間ですが、3年間で破棄しても問題ないのか不安に感じるところです。これに関して厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(解説)」を見てみると、参考4に「退職」時点における個人情報の適正な取扱いを確保するための留意点が紹介されています。これによると、「退職者の個人情報については、賃金台帳等の一定期間の保存を定めた労働基準法第109条等他の法令との関係に留意しつつも、利用目的を達成した部分についてはその時点で、写しも含め、返却、破棄又は削除を適切かつ確実に行うことが求められる。仮に利用目的達成後も保管する状態が続く場合には、目的外利用は許されておらず、また、その後も継続して安全管理措置を講じなければならない」、「退職者の転職先又は転職予定先に対し当該退職者の個人情報を提供することは第三者提供に該当するため、あらかじめ本人の同意を得なければならない」とされています。


 つまり、個人情報管理という視点においては、退職者の個人情報の利用目的が達成されたのであれば、その時点で、コピーしたものやデータも含めて返却、破棄または削除を行うことが求められています。このような対応が求められているため、いつまでも保管しておくことは適切ではなく、3年経過した時点で書類やデータのチェックを行う必要があるでしょう。しかし、特定の事情によって、必要な情報を長らく保管しておかなければならないときがあります。この場合には利用目的の範囲内で保管しておくことは問題ないと考えますが、やはり利用目的や保管期間等を明確にした上で保管しておくことが求められます。保管期間については、労働基準法第109条により3年間の保存義務がありますが、それ以上の期間としては、債務不履行による損害賠償債務の時効期間である10年を目安にするという考え方があります。そのため、長くとも10年を目安として、10年を過ぎる時点で、10年を超えてもなお保管しておく必要があるか否かを検討することが必要になってくるでしょう。


[関連法規]
労働基準法第109条(記録の保存)
 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。



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参考リンク
厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0701-1.html
厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(解説)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudouseisaku/privacy/050308-1.html


(福間みゆき)


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