企業再編における人事労務問題(その3)
本日は10月18日のブログ記事「企業再編における人事労務問題(その2)」の続きをお届けします。
次に給与制度であるが、これは根が深い問題になる。分割や合併の当然承継の場合は、再編を理由に給与の不利益改定をすることはできない。ゆえに通常はそのままダブルスタンダードで行くか、総支給を変えずに支給内容を変更することが多い。前者は問題の先送りなのでここでは述べないが、後者の場合は一般に次のような手段になる。
諸手当の支給基準は統一させる
職務関連手当(役職手当、公的資格手当、特殊職務手当等)と生活関連手当(家族手当、住宅手当)の支給基準は再編を機に統一するべきである。特に役職手当は再編にあたっての新組織体制に直結するものであるため、存続会社の制度自体も見直す必要に迫られることが多い。一方の生活関連手当も配偶者や子に対する手当の差異は徐々に不満の元(合理的な説明がつかないことによる衛生要因の悪化)になるため、これも早急に統一させておきたい。もちろん、高いものを低い方へ合わせる場合は前回述べた不利益変更の諸要件のクリアが必要になってくるが、ここは激変緩和措置(徐々に下げる)と代償措置(調整手当で総支給額は維持する等)を中心に進めることになる。さらには細かい項目として、通勤手当支給基準や出張日当なども統一することになる。
基本給制度(決定基準)を統一させる
ここは単一企業ですらなかなか基準が作れないものであるため、異なる企業文化から派生した制度を統一するのは至難である。しかし少なくとも、職能等級の段階とそれに対応する職能資格手当(資格給)は統一させるべきである。もちろん職能等級を設定する限りは、等級要件(その等級に要求されるスキル等)を明示することが要求されるが、これはすぐに出来るものではないため、まずは役職や年次(キャリア)を手掛かりに職能資格制度全体を再設定することになることが多い。この結果、基本給が高すぎる人はその分を調整手当で逃がすなどの代償措置は必要になる。この償却方法=激変緩和措置は、一定年限を定めて、例えば標準評価以下の場合は一定割合を減額する旨を就業規則(賃金規程)に明記するとか、昇給昇格時の賃金アップと相殺するなどの手段を講じることになる。これは再編に限らず、給与制度改定でよく用いられる方法である。
関連blog記事
2008年10月18日「企業再編における人事労務問題(その2)」
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2008年10月2日「企業再編における人事労務問題(その1)」
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2008年9月19日「未払い残業手当請求と労働時間管理」
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2008年8月5日「「当たり前のこと」と就業規則」
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2008年7月15日「活力のある会社には訳がある」
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(小山邦彦)
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