[ワンポイント講座]社員の自転車通勤を許可する場合の留意点

 最近のエコブームや健康意識の高まりから、都市部において自転車通勤をする者が増加しています。そこで今回のワンポイント講座では、社員が自転車通勤をする際の留意点について取り上げてみましょう。



通勤途上の事故の取扱いと通勤災害
 通勤途上で事故に遭った場合には通勤災害が問題となりますが、そもそも通勤災害とは、就業に関し、(1)住居と就業の場所との間の往復、(2)就業の場所から他の就業の場所への移動、(3)単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことを言います。この「合理的な経路及び方法」とは、通達によると「住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が用いると認められる経路及び手段等」のことを指しています(通達 昭和48年11月22日 基発644号、平成3年2月1日 基発75号、平成18年3月31日 基発0331042号)が、具体的にはこの「合理的な経路」とは会社に届けている通勤経路だけでなく、このほかに通常考えられる経路であれば、それも合理的な経路となります。また、子ども託児所へ預けるために自宅から託児所へ行き、そして会社に向かうような場合についても合理的な経路として認められています。
 
 次に「合理的な方法」については、実際に社員が利用している方法に限らず、地下鉄やバスなどの公共交通機関、自動車、自転車などを使用する場合と徒歩も含まれています。そのため地下鉄通勤を行っていた社員が自転車通勤に変更し、このとき通勤災害に遭った場合についても、自転車通勤していた経路について一般的に皆が通りうる経路であれば、通勤災害として認められることになります。


自転車通勤の許可基準
 自転車通勤の途上における事故に関しては、本人がケガをすることだけでなく、人身事故を起こすことで他社にケガを負わせてしまうようなリスクについても検討しておく必要があります。特に最近は自転車の高機能化により、死亡事故を含む重大な事故に発展する例も少なくないため、自転車通勤を許可する際には一定の安全運転教育を行うと共に、TSマーク付帯保険(TSマークの貼られた自転車を運転中、事故を起こした場合は、死亡、重度後遺障害に対する傷害保険金や賠償責任保険金が最高限度額2,000万円が支払われる)への加入などを条件とすることも検討に値するでしょう。


駐輪場の確保
 このほか、自転車通勤においては、駐輪場の確保が必要になります。近年は自転車の違法駐輪が問題視されていることから、会社としても黙認する訳にはいきません。そのため、会社として駐輪場を用意するか、あるいは本人に駐輪スペースを確保させるなどの対応が必要になります。


 これまでは自家用車通勤者について様々なルール設定を行うことが通常でしたが、今後は自転車通勤についても同様のルールの整備が求められます。



関連blog記事
2009年2月28日「[ワンポイント講座]出向先で役員となった従業員の労災保険・雇用保険の取扱い」
https://roumu.com
/archives/51510404.html

2009年2月21日「[ワンポイント講座]小規模事業所の法人代表者が業務上で怪我をした場合の給付の特例」
https://roumu.com
/archives/51506938.html


参考リンク
財団法人日本交通管理技術協会
http://www.tmt.or.jp/
自転車文化センター「自転車の制度と法律について【TSマーク制度】」
http://www.cycle-info.bpaj.or.jp/japanese/institution/ts.html


(福間みゆき)


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