[ワンポイント講座]原則的には難しい期間の定めのある労働契約の期間途中での解雇

 多くの企業では正社員以外にもパートタイマーや契約社員のように6ヵ月や1年といった期間の定めのある従業員を雇用していますが、会社の業績悪化や受注量の減少などの理由により、期間雇用者を解雇しなければならないことが最近増加しています。思い起こせば昨年末は「派遣切り」や「非正規切り」という言葉が生まれたほど、派遣の途中解約をはじめ、有期労働契約者の雇い止めや期間途中での解雇などが社会問題化しました。残念ながら1年を経過した現在においても雇用を取り巻く環境は改善しておらず、今後もこうした問題は多くの企業で発生することが予想されます。そこで今回のワンポイント講座では、期間雇用者の期間途中での解雇について取り上げてみましょう。


 そもそも期間雇用者については、労働契約法第17条において、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において、解雇することはできないと規定されています。また、雇用契約を結ぶ際に、期間の途中であっても一定の事由により解雇できる旨を記載し、会社と労働者との間で予め合意をとっておくことがありますが、記載した事由に該当するからといって「やむを得ない事由がある」と認められるものではなく、事案ごとに、実際に行われた解雇そのものが「やむを得ない事由がある」ものか否かを判断することになっています。併せて、この「やむを得ない事由」は、解雇権濫用法理(労働契約法第16条「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」)よりも厳しく判断されると考えられています。そのため、会社としては余程のことがなければ、原則的には契約期間の途中に解雇はできず、できる限り期間満了まで雇用する必要があると捉えておくべきでしょう。


 とはいえ、状況によってはどうしても雇用を続けることができず、一方的に期間雇用者を途中で解雇せざるを得ないことも現実的にはあろうかと思いますが、民法第628条において、「その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」と定められています。そのため、解雇された者が契約期間までの賃金を保障して欲しいと主張してきた場合、会社はその契約期間まで雇用していれば支払っていたであろう賃金額の全部または一部を支払わざるを得ない場合もあります。よって会社としては、このようなリスクがあることについても押えておくことが望まれます。


 ちなみに、やむを得ない事由があり期間雇用者を解雇する場合についても、労働基準法第20条に基づいて30日前の解雇予告もしくは30日分の解雇予告手当の支払いが必要となりますので、この点にも注意が必要です。


[関連法規]
労働契約法 第17条
 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


民法 第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。



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2009年8月6日「有期契約労働者の雇用管理の改善に向けて~有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン」
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2009年4月17日「厳しい経済情勢下での労務管理のポイント」
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2009年4月16日「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
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2008年12月19日「人員削減をする際に忘れてはならないハローワークへの届出」
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(福間みゆき)


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