[ワンポイント講座] 兼業禁止規定の有効性
正社員として勤務している者が、会社に報告しないで休日にアルバイトをしている場合、会社はこのアルバイトを禁止することはできるのでしょうか?会社としては社員には自社での本来の業務に集中して仕事をしてもらうことを期待し、また社外での活動により会社の信頼を傷つけないかが懸念されるところでもあるはずです。そこで今回のワンポイント講座では、就業規則における兼業禁止規定の有効性について取り上げてみましょう。
そもそも就業規則に兼業禁止規定が置かれている趣旨としては、社員は会社との労働契約の中で1日のうちの特定の時間について労務を提供する義務を負っており、アルバイトをすることでしっかり休息がとれず、仕事の能率が低下したり、あるいは過重労働にならないようにしたいということがあります。そのため、兼業により肉体的精神的疲労が蓄積し労務提供に大きな支障がある場合には解雇もやむを得ませんが、現実的に支障が生じておらず、職場秩序にも影響がないような場合には、社員だからといって兼業を禁止することは難しいという考え方があります。裁判例をみると、土木建築工事会社の社員がキャバレーのリスト係や会計係として深夜におよぶ6時間の勤務に従事していたことにより解雇された事案では、「労働者がその自由となる時間を精神的肉体的疲労回復のための適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供の基礎的条件をなす」こと、「兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もあり得る」ことから、就業規則の兼業の事前承諾制度の合理性を認めた例(小川建設事件 東京地裁 昭和57年11月19日決定)がありますが、国際タクシー事件(福岡地裁 昭59年1月20日判決)のように兼業をしていても業務への具体的支障がないことを理由に、解雇を無効とした事案も少なくありません。
一時帰休を実施している企業では社員からアルバイトの相談を受けるようなケースもみられますが、会社としては、アルバイトを認める基準を設け、届出制ではなく許可制とすることが望まれます。併せて、兼業することで過重労働が懸念されるため、会社は社員に対してアルバイトをする際の注意点を事前に説明しておくべきでしょう。
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2009年7月15日「[ワンポイント講座]社員がダブルワークを行う際の留意点」
https://roumu.com
/archives/51588137.html
(福間みゆき)
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