厚生労働省が策定した「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」

男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン 我が国においては急速な少子化と高齢化の進行により人口減少時代を迎えており、今後、中長期的な労働力人口の減少が見込まれています。こうした環境を背景として、これからは従来以上に女性労働力の活用が重要な課題となってくるでしょう。こうした中、厚生労働省は「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」を作成しました。本日はこのガイドラインのポイントについて解説します。

 今回作成されたガイドラインは、わが国の多くの企業が、「男女間賃金格差を計算したこともない」という実態に合わせ、実態調査票などの支援ツールを盛り込んだものとなっております。女性労働力の効果的な活用の第一歩として本ガイドラインの実態調査表を活用し、まずは自社の男女間格差を見える化するところから始め、制度面と運用面から賃金・雇用管理の見直しを進められてはいかがでしょうか?

[ガイドラインのポイント]
男女間格差の「見える化」を推進
 男女での取扱いや賃金の差異が企業にあっても、それが見えていない場合もあると考えられる。男女間格差の実態把握をし、取組が必要との認識を促すため、実態調査表などの支援ツールを盛り込んだ。

賃金・雇用管理の制度面の見直
(1)賃金・運用管理の制度面の見直し
<具体的方策>
・賃金表の整備
・賃金決定、昇給・昇格の基準の公正性、明確性、透明性の確保
・どのような属性の労働者にも不公平の生じないような生活手当の見直し
・人事評価基準の公正性、明確性、透明性の確保、評価結果のフィードバック
・出産・育児がハンデにならない評価制度の検討

(2)賃金・雇用管理の運用面の見直し
<具体的方策>
・配置や職務の難易度、能力開発機会の与え方、評価で、男女で異なる取扱いをしていないかを現場レベルでチェック
・コース別雇用管理の設定が合理的なものとなっているかを精査
・コースごとの採用や配置は、先入観やこれまでの実績にとらわれず均等に実施

(3)ポジティブアクションの推進
<具体的方策>
・女性に対する社内訓練・研修の積極的実施や、基準を満たす労働者のうち女性を優先して配置、昇進させる等のポジティブ・アクションの実施
※ポジティブアクションとは?
 固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、例えば管理職は男性が大半を占めている等、男女労働者の間に生じている事実上の格差の解消を目指して、女性の採用拡大・職域拡大・管理職登用の拡大等、個々の企業が進める自主的かつ積極的な取組をいいます。

 中でも近年は、総合職・一般職といったコース別雇用管理に関するトラブルが頻発しており、それが実質的な男女差別になっていないかなどチェックし、必要に応じて制度の見直しなどを検討したいものです。


関連blog記事
2008年9月24日「職階の差がもたらす男女間の賃金格差」
https://roumu.com
/archives/51417598.html

 

参考リンク
厚生労働省「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ned3-img/2r9852000000neek.pdf
厚生労働省「変化する賃金・雇用制度の下における男女間賃金格差に関する研究会報告書概要」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ned3-img/2r9852000000nerh.pdf

(中島敏雄)

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