国税庁の民間給与実態統計調査に見る賃金デフレの実情

民間給与実態統計調査に見る賃金デフレの実情 先日、国税庁より「平成21年分民間給与実態統計調査結果について」が発表されました。この調査は昭和24年に開始されて以来、毎年実施しているものですが、内容としては民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的としています。


 この調査結果に関しては、既に新聞紙上などにおいて「平成21年の平均給与406万円は、減少率5.5%と下落額23万7千円は過去最大で、これまでの前年比最大であった2008年の下落額7万6千円(1.7%)を大きく上回った」ことが報道されていますが、本日はその中身について少し詳しく見ていきたいと思います。



平均給与の内訳
 1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は406万円であり、前年に比べて5.5%と過去最大の減額となっています。これを男女別にみると、男性500万円、女性263万円で、前年に比べて、男性は6.2%の減少、女性は2.9%の減少となっており、特に男性の平均給与の減少が大きいことが分かります。また平均給与を、平均給料・手当てと平均賞与の二つに分解してみてみると、男性の平均給料・手当は428万円(平成20年:449万円 減少率4.6%)、女性の平均給料手当は、230万円(平成20年:236万円 減少率2.3%)、男性の平均賞与は71万円(平成20年:84万円 減少率14.6%)、女性の平均賞与は33万円(平成20年:36万円 減少率7%)となっており、特に男性の賞与の減少が大きかったことが分かります。


給与階級別分布
 1年を通じて勤務した給与所得者4506万人について、給与階級別分布をみると、300万円超400万円以下の者が815万人(構成比18.1% 前年比+0.2%)でもっとも多く、次いで200万円超300万円以下の者が790万人(構成比17.5% 前年比+1.1%)となっています。400万円超500万円以下の者が616万人で構成比は13.7%と前年同率となったことを境に500万円超ではすべての区分で構成比が減少し、400万円以下ではすべての区分で構成比が増加しています。このことから、ローンのボーナス払い等を利用している家計への影響や、幅広い給与所得者世帯で1ランク生活水準を落とさざることを得なかった家計の姿を想像することができます。



関連blog記事
2006年9月30日「民間企業の平均給与は8年連続の減少」
https://roumu.com
/archives/50741588.html


参考リンク
国税庁「平成21年分民間給与実態統計調査―調査結果報告」
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2009/pdf/001.pdf


(中島敏雄)


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