[ワンポイント講座]管理職が深夜勤務した際における賃金台帳の取扱い

 管理職については労働基準法第41条に定める管理監督者として取扱うことによって労働時間の規制から外れることとなりますが、それはあくまでも労働時間、休憩、休日の規定の適用が免除されるだけであり、深夜業に関する規定は適用は除外されないことになっています。そのため管理職が深夜(午後10時~午前5時)に及んで仕事をしていれば深夜割増手当を支払う必要があり、支払っていなければ未払い残業の問題に繋がります。また、これについては併せて管理職が深夜に勤務した場合、その労働時間数を賃金台帳へ記載する必要があるのかという疑問が出てくることから、今回のワンポイント講座では管理職が深夜勤務した際における賃金台帳の取扱いについて取り上げましょう。


 そもそも会社では賃金台帳を備え付けておく義務があり、記載しなければならない事項は以下のとおりとなります(労働基準法施行規則第54条第1項)。
氏名
性別
賃金(諸手当、賞与を含む)毎の計算期間
労働日数
労働時間数
時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数
賃金の種類(基本給、諸手当)ごとの金額
労働基準法第24条第1項により賃金の一部を控除した場合の額 


 そのため、通常の従業員については上記の事項を賃金台帳に記入しなければなりませんが、管理監督者についてはどのような取扱いになるのでしょうか?これについては、同施行規則第54条第5項にその取扱いが定められており、上記のうちについては記載する必要がないとされています。ここで管理職が深夜勤務した際には深夜割増賃金の支払いが必要とされているにも関わらず、労働基準法施行規則の中で賃金台帳に記載がする必要がないとされている点に矛盾が生じているように考えられます。これについては、通達(昭和23年2月3日 基発第16号)が出されており、「同規則第54条第1項第6号の「深夜労働時間数」は賃金台帳に記入するように指導されたい」とあることから、会社としては記入しておくことが求められます。


 将来において、未払い残業代の支払いをめぐるトラブルが生じかねないことからも、会社としては管理職に対して深夜労働時間数を申告させていくことが望まれます。


[関連法規]
労働基準法 第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの


労働基準法施行規則 第54条
 使用者は、法第百八条 の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
一 氏名
二 性別
三 賃金計算期間
四 労働日数
五 労働時間数
六 法第三十三条 若しくは法第三十六条第一項 の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
七 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
八 法第二十四条第一項 の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額
2 前項第六号の労働時間数は当該事業場の就業規則において法の規定に異なる所定労働時間又は休日の定をした場合には、その就業規則に基いて算定する労働時間数を以てこれに代えることができる。
3 第一項第七号の賃金の種類中に通貨以外のもので支払われる賃金がある場合には、その評価総額を記入しなければならない。
4 日々雇い入れられる者(一箇月を超えて引続き使用される者を除く。)については、第一項第三号は記入するを要しない。
5 法第四十一条各号の一に該当する労働者については第一項第五号及び第六号は、これを記入することを要しない。



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(福間みゆき)


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