厚生労働省ワーキンググループがまとめた職場のパワーハラスメントの定義と対策
今週の月曜日、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」から報告書が公開されました。このワーキング・グループでは、近年、社会問題化している職場のいじめ・嫌がらせの問題について、この問題の現状と取組の必要性、どのような行為を予防・解決すべきか、この問題への取組の在り方等について議論が重ねられてきており、今回、円卓会議への報告が取りまとめられました。その主な内容については、以下の通りです。
[職場のパワーハラスメントの定義]
この報告書では、職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントについて、「職場のパワーハラスメント」と呼ぶことにしており、その具体的な定義を以下のようにしています。
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
なお、この【優位性】とは、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれるとしています。
[職場のパワーハラスメントの行為類型]
職場のパワーハラスメントの行為類型については以下の6つが挙げられています。
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
ただし、この6つで職場のパワーハラスメントのすべてを網羅するものではないともしています。
[職場のパワーハラスメントに対する労使の取組]
この問題を予防・解決するための労使の取組については、セクシュアルハラスメント対策などの枠組みを活用することなどにより、職場の実情に即した形でできる取組みから始めること、そして、それを充実させていくことが重要としています。それには、まず、企業として職場のパワーハラスメントはなくすべきという方針を明確に打ち出した上で、以下のような対策に取り組んでいる企業・労働組合の主な取組の例と、取り組む際の留意点を紹介しています。
■職場のパワーハラスメントを予防するために
○トップのメッセージ
○ルールを決める
○実態を把握する
○教育する
○周知する
■職場のパワーハラスメントを解決するために
○相談や解決の場を設置する
○再発を防止する
職場のパワーハラスメントは大きな問題にはなっていますが、報告において、「取組を始めるにあたって留意すべきことは、職場のパワーハラスメント対策が上司の適正な指導を妨げるものにならないようにするということである」ともしており、今後、どのようなものが「適正な指導」や「業務の適正な範囲」に当たるかというのは、この問題を考える上で大きなポイントになってくるでしょう。円卓会議では今後、この報告を基にさらなる議論が行われ、3月を目途にこの問題の予防・解決に向けた提言が取りまとめられる予定とのことです。
関連blog記事
2011年12月27日「厚生労働省ワーキンググループがまとめるパワハラの定義と行為類型」
https://roumu.com
/archives/51899537.html
参考リンク
厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html
(宮武貴美)
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