中国人事管理の先を読む!第38回「残業管理と不定時労働制(2)」

time2 先週の記事「残業管理と不定時労働制」では不定時労働制の概要についてお話しましたが、今回は少し実務的な措置や内容について書いてみたいと思います。

 中国では、企業管理職のような労働時間の融通性が認められる職務を担当している従業員や、営業職のように事業所外での勤務により時間管理が困難な職務を担当している従業員に対して残業手当の不支給を認める法律が存在しません。企業としては残業手当の支給を免除するために、労働契約書における合意や就業規則の中に不支給の旨などを明記して対応しています。ただ、従業員が事後にこの措置に不服を抱き、仮に労働仲裁や労働訴訟を起こして和解形成となった場合、これらの合意あるいは記述自体が無効と判断され、従業員側が勝訴するケースも多く見受けられます。そこで企業としてはグレーな部分はできるだけ排除したいという意向から、不定時労働制の申請を検討することになります。

 不定時労働制の申請が認められる従業員の職務は前号で記述した4区分となるのですが、まず会社は、会社を登記している地域(区)の管轄労働局へ不定時労働制の申請を行います。この際、原則として以下の書類の提出が求められます。
不定時・総合労働時間制申請表
従業員の業務および休憩に関する計画申請表
実施に同意する従業員に関する名簿

 の従業員名簿は、不定時労働制を執行した場合、その対象となる従業員のみを記載します。必ず本人同意の証であるサインを得ることが必要となります。また、従業員名簿を提出しても、不定時労働制の許可は、その企業の職務(例えば「営業職」)に対して許可を与えるものですので、名簿の提出後、従業員の新規雇用や退職が発生しても、許可に対して影響が及ぶことはありません。管轄区によっては、このほかにタイムカード等による過去3年間の労働記録や工会(労働組合)、あるいは従業員代表の同意協議書の提出も求めています。一般的に上海市では、黄浦・静安・徐匯の3区では審査が厳しく、浦東新区、特に外高橋の労働分局は申請件数も多いことから、審査が比較的緩い傾向が見られます。

 以上の書類を準備し、労働局に申請すれば概ね15営業日で審査結果が通知され、申請許可が下りれば許可証が郵送されてきます。許可の有効期間は1年間ですので、次年度からは許可証の更新を行うことになります。近年は労働関連法の改定や、新しい労働政策の施行も多く、従業員の権利保護の観点もあって、晴れて許可を取ったものの、労働局による更新が拒否されてしまうというケースも増えてきています。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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